標準は「変えていくもの」

 設計ナレッジを可視化・体系化・標準化する具体的な方法は、別の機会に改めて解説する。ここでは、設計の高度化を進める意義について述べる。特に誤解を招きやすいのは「標準化」である。

 設計ナレッジを標準化し、属人的設計から脱却することは、間違いなく大切だ。一方で、標準化によって設計者が“マニュアル人間”になり、自分で考えなくなってしまうのも問題である。「標準に縛られていては魅力的な製品を作れない」という意見は根強いし、確かにそういう面は否めない。従って、俗人的設計からの脱却と魅力的な製品の実現を両立させることが、設計の高度化における重要なポイントになる。

 そのためには、標準化に対する認識を改める必要がある。従来、標準は「守らせるもの」という意識が強かった。標準から少しでも外れることをしようものなら、「なぜこの標準を守らないのか」「この標準値でできなかったのか」「この標準部品を使った方がよい」などと、とにかく標準を守らせようとする力が働く。もちろん標準は大切だが、一方でそれは設計者に我慢をさせたり、設計者の工夫を潰したりする面がある。だから、「標準に縛られていては魅力的な製品を作れない」という意見が出てくる。

 今後、標準に対しては「変えていくもの」という意識も持つことが重要だ。標準を守らせず、標準を変えていった工夫だけを評価するぐらいの考え方が求められる。標準は、過去の全員の経験や知恵、苦労が体系化されたもの。それを踏み台に自分が1段上に登る。そして、他の誰かが自分を踏み台にして、さらに上に登る。一つひとつの段は低いかもしれないが、寄り集まれば大きな段差になる。これこそが全員力である。

標準の位置付け
標準は、「守らせる」ものではなく、「変えていく」ものと認識しなければならない。
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