山本 日本の場合は、工学部がきちんと工学部なんですよね。生産に関する技術など、マニュファクチャリングをちゃんとやっているんです。

 イスラエルとかかなり頑張っている国の工学部は、日本で言うところの「工学部」ではなくソフトウエアエンジニアリングに特化した学部だったりして、テクノロジーは「エンジニアリング」のことだったりします。

 ハードウエアについては、大企業の専門化された人たちが学問ではないところでやっています。大学では、その上に載るソフトウエアをより効率化する仕組みを考えている。そういう意味でのエンジニアリングですね。

今井 特集には、京都にある電気自動車(EV)のベンチャー企業が登場します。京都周辺の部品メーカーを集めて、日本の部品を積極的に用いたEVをつくっていて、最初のEVは高くても売れるスポーツカー。米テスラモータースのイメージですね。でも、EVは、中国などでたくさんのベンチャー企業が開発していそうです。

川口 ただ、新興国の企業、韓国メーカーだってモーターレースの世界には、まだほとんど出てきていません。高速、耐久性などの土俵でカッティングエッジな走りを実現して、ガチで戦える駆動系をつくる取り組みはは、すごいノウハウが必要ですから。かっこよくて、しかも「出るところに出たら勝てる」という水準の要素技術を開発して、擦り合わせ技術でシステム化していけるところは、世界でも数えるほどしか存在しないのでは。

(写真:加藤 康)
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 基礎から構築していかなければならない開発が面倒な究極の要素技術は、新興国では手が出ないんですよ。それこそ、「ノーベル賞を取ろう」というところから技術を蓄積していかなければならないので。社会全体でライフサイクルがどんどんと短くなっている中で、そんなものをつくる時間も余裕もないんですよね。国家の成長サイクルのスパンが短くなっていますから、蓄積をつくろうと立ち止まった瞬間に後からやってくる国にすぐに追い抜かれてしまう。

 表面的にとにかく利益を回収するために手軽な開発対象がソフトウエアですよね。だから、新興国では判で押したようにハイテク特区は、ソフトウエアが対象なんです。それをテクノロジーと称している。ハードウエアのような面倒なものを手掛けている国は、世界を見渡してもあまり存在しないですよ。

今井 京都のEVベンチャーは車台(シャーシ)の部分を海外に輸出して、「その上にボディーカウルをつけてクルマを開発してください」というプラットフォームビジネスも志向しているようです。

川口 それは、ありですよね。モジュール化でオープンなものづくりが進むと、すごくとがったクルマを製品化しても採算が合う、ロングテールで拾われるという百花繚乱の楽しい世界が待っているんじゃないでしょうか。

 これまでは、生産技術が稚拙だったが故に大量生産の方が優先されてきた。でも、オンデマンドのものづくりやオープンマニュファクチャリングは、何十年か前の世界にネジを巻き戻せることを意味しています。かつては、日本にオートバイをつくる会社が300社あったわけです。論理的には、その世界に戻れるということですよね。民生品として手にする最もつくるのが面倒な駆動系を備えている自動車すら、です。