川口 今、世界的な特区ブームなので多くの国にハイテク特区があります。日本よりも後から発展した国のハイテク特区は、ことごとくIT(情報技術)なんだよ。ソフトウエアしかないの。インドのバンガロールのような「シリコンバレーもどき」がどこの国にもあります。

 日本よりも先に豊かになった欧米の国には、航空機だったり、メカニカル、エレクトロニクス、バイオだったりのハードウエア関連の特区があるんですね。ハードウエアはノウハウであったり、試験だったりといったさまざまな技術の蓄積が必要だからでしょう。

 一方のソフトウエア特区は蓄積が必要ないからポッと出てきた国でも、うまくできてしまう。何が言いたいかというと、今回の特集記事ではあえてハードウエアベンチャーを選んだと思うのだけど、「ハードウエアしかない」というのは、ある意味で先進国の成れの果てというか、先進国だからできるんだよねという部分がありますよね。ドットコムブーム以降に出てきた「ものすごく、カネをもうけられるモデル」は、ほとんどソフトウエアで、ハードウエアは大きな進化をしていません。

川口 盛之助(かわぐち・もりのすけ)
1984年、慶應義塾大工学部卒、イリノイ大学修士課程修了(化学専攻)。 技術とイノベーションの育成に関するエキスパート。付加価値となる商品サービス機能の独自性の根源を、文化的背景と体系的に紐付けたユニークな方法論を展開する。その代表的著作『オタクで女の子な国のモノづくり』(講談社BIZ)は、技術と経営を結ぶ良書に与えられる「日経BizTech図書賞」を受賞し、英語、韓国語、中国語、タイ語にも翻訳される。台湾、韓国では、政府産業育成のための参考書として選ばれ、詳細なベンチマーク報告書が作成される。心をつかむレクチャーの達人としても広く知られる。TEDx TokyoにおけるToilet Talkは40万回再生という異例の反響を得ており、Yahoo Japanの動画サイトでは世界の傑作プレゼンテーション・ベスト5に選ばれる。世界的な戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトル・ジャパンにおいて、アソシエート・ディレクターを務めたのちに株式会社盛之助を設立。国内のみならずアジア各国の政府機関からの招聘を受け、研究開発戦略や商品開発戦略などのコンサルティングを行う。(写真:加藤 康)
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山本 確かに日本のベンチャー企業には、メカ、エレクトロニクス、プラントあたりに取り組むところが結構多いですね。以前、大学発で画像処理系のソフトウエア開発をしているところを訪問してみたら、なぜか「チップ」があったりするんです。「LSI、いらねえじゃん」と思うんですけど、なぜかチップから手掛けるという…。

今井 やはり、ハードの方面に…。

山本 組み込みたい気持ちで一杯なんですね(笑)。何を組み込むかよく分からないけど、組み込みたい。

川口 僕が言いたいのは、ハードウエアのような面倒なものをきちんとやっていることが日本の強みだということなんです。先ほど、「先進国の成れの果て」と言ったけれども、悪い意味ではなく、前向きな話なんです。「テクノロジー」という言葉を使うときに、ソフトウエアもハードウエアも議論がごちゃ混ぜになってしまっている。それではいけないよと。

今井 日本が強いところ、つまりハードウエアを志向して、新しい産業の形を目指していくべきということですね。

川口 そうなんです。