「設計」と「原価」がバラバラ

 しかし、前述の通り21世紀になって設計と製造の関わり方は変わってしまった。関係は疎遠になり、若手設計者は現場に足を運ぼうとせず、メールで済ませてしまう。とはいえ、「昔のように密なコミュニケーションが重要」と過去を礼賛しているだけでは始まらない。今の時代にあった「怖いおっちゃんの顔」を取り戻す必要がある。それを取り戻せて、初めて設計のあり方が大きく変わっていくのである。

 筆者は、この20年余り、PDM(Product Data Management、製品データ管理)、3D-CAD、E-BOM、標準化、モジュラーデザイン(MD)、原価企画、VE(Value Engineering)などのテーマで設計改革を手掛けてきた。世の中には、こうした設計改革が思うように進まない企業も多い。「技術力はあるのにもうからない!」「グローバル市場のコンペで勝てない!」「考えない若手が増えて技術力が落ちている!」といった不満をよく聞く。

 これにはさまざまな原因があると思うが、技術力があるのにもうからないという問題に関しては、根本的な原因があると感じている。それは、「設計」と「原価」がバラバラになっていることだ。

 「設計でコストの80%が決まる」。こんな言葉を1度は聞いたことがあると思う。だが、実際には多くの企業で設計部門と原価部門がバラバラになっていないだろうか。設計部門が頑張れば、良い製品は生まれるかもしれない。しかし、設計部門と原価部門がバラバラの状態でもうかる製品など生まれるはずがない。そこで、筆者は「プロフィタブル・デザイン - Profitable Design -」(もうかる設計、利益獲得設計)を提唱したい。

 グローバル競争がますます激化する中、強い設計に生まれ変わるため、競争力のある製品を生み出すため、そしてもうかる製品を生み出すためには、ナレッジを中心に設計と原価を融合させる必要がある。プロフィタブル・デザインの実現に不可欠な“キーファクター”は二つある。一つは、今回説明した固定費マネジメント。もう一つは、「設計高度化」という概念だ。この設計高度化については、次回説明したい。

プロフィタブル・デザインの実現に不可欠な二つのキーファクター
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今回のまとめ
・製造業は固定費回収のビジネスであり、変動費(材料/部品)ではもうけを生み出せないので、固定費(設備/治具)でもうけを生み出すことが重要である
・設計者は固定費マネジメント(設備/治具を変えず、固定費を増やさないこと)に意識を向ける必要があり、そのためには、現場を知らなければならない
競争力と収益性を兼ね備えた製品を生み出す『プロフィタブル・デザイン(利益獲得設計)』の実現が必要である