「垂直統合はもうからない」の嘘

 設計者が固定費マネジメントすることの重要性を確認した上で、Apple社の話に戻ろう。

 2007年、「iPhone」のApple社、「Wii」の任天堂、液晶テレビの米Vizio社が高業績で話題になっていた。いずれも、自社工場を持たないファブレスメーカーだ。これによって、「ファブレスはもうかる。日本の電機メーカーは工場を持つ垂直統合だからもうからない」という認識が広がった。それを受けて、自社工場を手放した企業も多く目にした。

 垂直統合はもうからない。工場を持つともうからない。果たして本当だろうか? そんなのは、嘘だ! 垂直統合だからこそもうかる。工場を持つからもうかるのだ。

 実際には、Apple社は電機メーカーの中で最も垂直統合が進んでいる。販売店は自前のApple Storeを持ち、OSも独自開発、そしてSteve Jobs氏自らがパッケージングの特許を8件も発明している。さらには「iTunes」のようなサービスも運営している。

 一方の日本メーカーといえば、販売は家電量販店任せ、OSは外部の「Android」や「Windows」を使用し、サービス領域にもそれほど力を入れていない。明らかな差がある。

 「そんなことを言っても、Apple社は自社工場を持っていないではないか!」という反論が来そうだ。確かに、同社が工場を持ってないのは事実である。しかし、最もお金が掛かる切削加工機やレーザー加工機についてはApple社が自ら投資し、製造委託先の台湾Hon Hai Precision Industryなどに貸与しているのだ。つまり、Apple社は工場を持っていないかもしれないが、もうけを生み出す固定費の部分に投資し、リスクを負っているのである。そして、変動費の部分だけを外注しているわけだ。