山本 ある意味、公的セクターにコミットしたくないという気持ちがあるのかもしれません。「それは国がやるはずだ。もしくは地球がやるはずだ。我々はその上を走らせていただく自動車メーカーでございます」ということですから。そうなると、どうしても自動車業界の中で納まることばかりやろうするんです。人工知能はクルマの中で完結するもの、クラウドでやる部分はネットにアクセスできない地域もあるからやらないとか。そう言っていたら、できることがどんどんしょぼくなっていくんですね。

今井 日経エレクトロニクス3月号の特集が「クルマの未来」なんですけど。自動運転になったらクルマがスパコン並みの処理能力を持つようになるわけですよね。すると、一家に1台スパコンがあるんだから、クルマの中だけではなく、いろいろあるんじゃないですかという話をしています。これまでは電気自動車の蓄電池だけが注目されていましたけれど。

川口 そうきましたか。自動車自体がクラウドになるんだ。

今井 自動車業界の外の人たちは、そういうことを考えているわけです。

川口 駐車場に置いてあるときはサーバーとして使うのね。

今井 そう、そう。まあ、クルマが移動しちゃったらどうするんだという話はありますけど…(笑)。

山本 「今、まさにそういうことが起きているからきちんと実験していきましょう」というような発想にはならないですよね。だいたい四つのタイヤの上に乗っかっているもののことしか考えないと行き詰ってしまいます。それって、野菜を載せた大八車と思想という点では変わらねえじゃないかという。

(写真:加藤 康)
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今井 メーカーズとか、ベンチャー企業からは、未来が出てくると思うんですけど、国を挙げたインフラのような話になるとやはり自動車メーカーをはじめとする大手企業しかできないわけですよね。

山本 それは、この対談の中で取り上げてきた「好奇心」の話で、「大八車に人間が乗っていようが、豚や野菜が載っていようが変わらない」という発想で仕事をしていたら限界があるんじゃないですか。

 クルマ自体がサーバーになる、クラウド化するという世界になったとき、「人がクルマに乗っている利便性とは何だろう」「身の回りを人が運転しないかもしれないクルマが通過するとき、安全がどう確保されるのだろう」ということを規定して、クルマは単に移動するだけの機械じゃないというところまで自動車メーカーが業務領域を広げていかなければならない。

 実は、クルマの中にサービス業界ができているようなもんじゃないですかと。だって、自動運転だったら、クルマに乗っているときにみんながヒマになるわけじゃないですか。