山本 先ほどのヘッドギアもそうですけれど、人間自体が大いなるセンサーじゃないですか。それを利用して人間の感覚や知覚をうまく組み合わせるような仕掛けをエレクトロニクスで実現していくと、取り組めることは膨大に出てくると思うんです。

(写真:加藤 康)
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 その話をしても、最初は分かってもらえない。でも、エレクトロニクス業界でやっている「ユーザーインタフェース(UI)」や「ユーザーエクスペリエンス(UX)」も見方によっては、その仕組みの一つですよね。例えば、テレビであれば、視聴した映像コンテンツを視聴者が「クール」と思ったかどうか分かる仕組みを考えましょうと。例えば脳波をテレビが遠くから測るとか。「ああ、この人はテレビの前で眠そうだ」となれば、疲れているのかもしれない、つまらないのかもしれない。そういうものを組み合わせると、いろいろなアプリケーションを考えられますよね。

 それを担うのがエレクトロニクス業界だから、そう言うことを考えられる人を増やしましょうという話をメーカーに提言してみるわけです。でも、エレクトロニクス業界の人たちは「会社から必要だと言われた機能を満たすように何かモノをつくればいい」というところに完結している。でも、モノが人に与える影響や、機会と人間のかかわり方、人間の気持ちや機能をどうやって先方に伝えるかなど、もっと深追いできることを考えるといろいろな話ができる。

 「私たちはテレビを作っています」という機能だけの話じゃなくて、人はなぜテレビをつけるのか、その機能に何を求めているのかが包括的に分からないと、テレビが電波に乗って降ってくるコンテンツをただただ垂れ流したり、録画したコンテンツを表示するだけの機械になってしまう。その機能を実現するためだけに競争していたら、コモディティ化したら終わりだとみんなが気づいてる。そういう機能進化の軸と違う他の機能と融合できるのだとしたら、もっと快適なモノをつくれますよね。そこを怠ってるんじゃないかと強く思うんです。

今井 そこは、川口さんが言っていた「好奇心」になってくるんですか。

川口 子供みたいなところはありますよね。1人のエンジニアである前に、子供の親であったり、社会を構成する一員であったりするわけで、「僕は技術者なので、そのことは分かりません」とは言えないと思うんです。専門家である前に、人間なのだから。

 でも、「技術者は専門家だから」と許されてしまう周囲の環境がある。甘えの構造がそこにあって、「何かを突き詰める職人だから、それがいい」と、職人をすごく変な目で持ち上げるような雰囲気がある気がします。