山本 たまたま若い人たちと交流する機会があって、最初からベンチャー企業を選ぶ人が最近は結構いるんです。でも、その中で本当に先頭に立って引っ張っていくやつって、技術者であれ、経営者であれ、限られています。

 そういうキーパーソンが現状の取り組みに飽きて、別のことに興味があると言ったときについて行く人がいるかいないかが重要だと思うんです。だって、全体が見渡せているキーパーソンが飽きたということは、どうせはずれだということですから。

今井 そこでピボットして別の方向に進んだ方がいいわけですよね。

(写真:加藤 康)
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山本 そうですね。「俺は当初はこっちがすごくいいと思っていました。でも、試行錯誤した結果、狙いがうまくいかなかったので、いままで取り組んできたものは損切りして、新しい技術や事業へピボットします」。これはオーケー。

今井 そうできるのは、やはりベンチャー企業で、大企業では難しい。

川口 ベンチャー企業というのは、新しい発明、新しい権利を何かの応用につなげるシーズアウトの世界ですよね。それは割とオーソドックスなやり方でしょう。核融合発電のような話と同じで、シーズアウトをショットガンで撃てばいい。「千に三つ」の世界ですからね。

 でも、大きな会社でやっている、ほとんどの研究や開発業務では、担当者がお客さんに興味があるかないかが大切なんです。それをベンチャー企業と同じシーズアウト型のものだと勘違いしてしまいがちなんですね。

 例えば、コンピューターの研究開発をしている人がいるとします。もし、その人が「私はコンピューターの研究をしているのであって、銀行の勘定系の仕組みには興味がありません」と言ったらどうでしょう。もう、その人には救いがないですよ。

 もちろん、コンピューターの技術や学術の関連では学会があって、ロードマップがある。そういう専門的知識を知ることは必要条件だけれども、仕事としては十分条件ではない。

 十分条件としては、端的に言えば「銀行に関連する勉強会に参加するつもりがあるかどうか」「銀行関係者だけが集まっている会合ってどんなことを話しているのだろうと好奇心を抱くかどうか」ということです。「同じ勉強だったら付き合ってみるか」という柔軟性が欲しいですよね。

山本 本当にそうですよね。

川口 「原宿にイノベーションラボをつくりました」というようなメーカーの取り組みがあるじゃないですか。そこにも勘違いがありますよね。