今井 すごく複雑で対応できないのだったら、例えば人工物で置き変えちゃうとか。

山本 そういうことです。人間自体のリプレイスメントですよ。要は「あなたの心臓が自然に止まる前に、1回人工心臓を入れて、2年ぐらいしてから培養しておいた新しい心臓を移植しましょう」というような話になっちゃっているんですよ。それは「乾きもの」と「なまもの」の最高の融合分野で、エレクトロニクスやメカトロニクスの目指すべき道はそっちだっていう話になっちゃうかもしれないですよね。

今井 拒否反応が出ない完全セラミックスで歯を作っちゃえば虫歯にならない。

山本 ならないですよね。「それでいいんだっけ」っていうのは、また別の話としてありますけど(笑)。

川口 SF映画の世界だね(笑)。

川口 盛之助(かわぐち・もりのすけ)
1984年、慶應義塾大工学部卒、イリノイ大学修士課程修了(化学専攻)。 技術とイノベーションの育成に関するエキスパート。付加価値となる商品サービス機能の独自性の根源を、文化的背景と体系的に紐付けたユニークな方法論を展開する。その代表的著作『オタクで女の子な国のモノづくり』は、技術と経営を結ぶ良書に与えられる「日経BizTech図書賞」を受賞し、英語、韓国語、中国語、タイ語にも翻訳される。台湾、韓国では、政府産業育成のための参考書として選ばれ、詳細なベンチマーク報告書が作成される。心をつかむレクチャーの達人としても広く知られる。TEDx TokyoにおけるToilet Talkは40万回再生という異例の反響を得ており、Yahoo Japanの動画サイトでは世界の傑作プレゼンテーション・ベスト5に選ばれる。世界的な戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトル・ジャパンにおいて、アソシエート・ディレクターを務めたのちに株式会社盛之助を設立。国内のみならずアジア各国の政府機関からの招聘を受け、研究開発戦略や商品開発戦略などのコンサルティングを行う。(写真:加藤 康)
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今井 ビッグデータをやっている研究者の中には、口内の細菌のようなものすごい複雑な環境でも、コンピューターの処理能力が高まれば、計算できちゃうんじゃないかと言う人もいますね。

山本 ビックデータのある局面を切り取って、「統計的にこうなる」というのはあると思います。「あなたはこういう病気になる可能性があるから、こういう口内環境を設定すべきである」ということを言うのはそれほど難しくありません。でも、「なぜ、その細菌がいるのか」ということはコンテクスト(経過や推移、文脈)なので、そのコンテクストを解き明かしてあげなければいけないと思うんです。

川口 「演繹の世界を積み上げたらすべての世界ができる」というよりは、生態系の方にそのまま学んだ方がいいよね。演繹的に進めていくと、宇宙の数だけコンピューターが必要になっちゃうということが、何となくニュアンスとして分かる。

 ハードウエアでも、ソフトウエアでも、境界領域が見えてきた。そういう意味では、特定の技術をしゃぶり尽くしていくという方向性もあるでしょうね。例えば、エンジンは100年かけて練り込んできて、すごい技術になっているわけだから。

山本 本当に「しゃぶり尽くす」ですよね。昔の蒸気機関からピストンを使う技術のしゃぶり尽くし方はすごい。昔の人が見たら「ここまできたの!」と思うぐらいのものになっています。でも、それはたかが100年なんです。今は稚拙な技術であっても、本当に需要があってしゃぶり尽くそうと思ったら、これから100年後には全く違うものができているかもしれません。