山本 世の中的には、どちらかといえばそうですね。

川口 その方向の取り組みは、民に広くというか、社会全体にはインパクトが大きい。

今井 プロシューマー的な人たちが出てきて、量産はEMS(電子機器の受託生産)企業に任せちゃって変わったモノをプロトタイピングしていると。

山本 メーカーズはそれこそ何千個、何千台という製造業の常識からすると小さな量産オーダーで勝負しようとしているので、どうしても単価が高くなってしまう。「自分たちで大きな需要をつくって、社会を変えていく」という印象は、今のところ薄いですね。多品種少量の限界点までいくと、そうなるのかもしれません。夢として、もう少しドカンという部分があればいいのですけれど。

今井 確かにドカンというところはあまりないですね。

山本 一方で、画期的な最先端技術でモノをつくろうというスタートアップ企業の話もいろいろあります。コペルニクス的な転換で半導体のチップをつくる新しい製造手法のような。今の段階ではよく分からないのだけれど、メーカーズのブームという背景もあって多くの資金が集まっている。少しバブル風味の危険な雰囲気も漂っていて、本当に大丈夫かと思うところもちょっとあります。

川口 ウルトラ微細加工で人工血管や人工臓器をつくるような話もありますよね。そういう分野でもメーカーズと同じようにボトムアップによる積み上げ方式でモノがつくれるという話になっている。実は昔ながらのオーソドックスな開発なのだけれども、「カスタムで多様な世界」という点で共通しているので、ものづくりベンチャーの話が二つの方向性で混在しているということでしょうね。

川口 盛之助(かわぐち・もりのすけ)
1984年、慶應義塾大工学部卒、イリノイ大学修士課程修了(化学専攻)。 技術とイノベーションの育成に関するエキスパート。付加価値となる商品サービス機能の独自性の根源を、文化的背景と体系的に紐付けたユニークな方法論を展開する。その代表的著作『オタクで女の子な国のモノづくり』(講談社BIZ)は、技術と経営を結ぶ良書に与えられる「日経BizTech図書賞」を受賞し、英語、韓国語、中国語、タイ語にも翻訳される。台湾、韓国では、政府産業育成のための参考書として選ばれ、詳細なベンチマーク報告書が作成される。心をつかむレクチャーの達人としても広く知られる。TED×TokyoにおけるToilet Talkは40万回再生という異例の反響を得ており、Yahoo Japanの動画サイトでは世界の傑作プレゼンテーション・ベスト5に選ばれる。世界的な戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトル・ジャパンにおいて、アソシエート・ディレクターを務めたのちに株式会社盛之助を設立。国内のみならずアジア各国の政府機関からの招聘を受け、研究開発戦略や商品開発戦略などのコンサルティングを行う。(写真:加藤 康)
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今井 メーカーズの人たちは、先のことをあまり考えていないということなんでしょうか。

山本 いや、考えているのかもしれません。確かなのは、「メーカーズ」というキーワードは今、資金を集めやすいということでしょう。メーカーズブームで資金がバーンと集まってしまう。だから、現実の営業をどうするかといった先のことは、ほとんど考えなくてもよくなっているのではないでしょうか。プレゼン資料の上では、いくらでも先行きをつくって言えてしまうので。

 でも、先ほど川口さんが話したカスタムメードの人工臓器という話であれば、本来は開発した後にもさまざまなハレーションが起きるはずなんですよ。それこそ量産のきかない世界ですから。