半導体集積回路(LSI)の低電力化に最も有効な手段は、基本素子であるトランジスタの電源電圧(動作電圧)を下げることだ。トランジスタの消費電力は、電源電圧の2乗に比例するためである。

 現行のトランジスタ(MOSFET)は、微細化とともに電源電圧を下げてきたが、0.5Vを大きく下回るような極低電圧動作の実現は難しいとされる。その理由の1つは動作原理上、ゲート電圧に対する電流の立ち上がりの急峻(きゅうしゅん)さを示すS(サブスレッショルド)係数を、室温で60mV/桁以下に下げることができないことだ。S係数が小さいほど電流が急峻に立ち上がり、電源電圧を下げられる。

 こうしたMOSFETの限界を克服しようと、MOSFETとは異なるデバイス構造や動作原理を使って、S係数を60mV/桁以下に下げる技術の開発が盛んになってきた。極低電圧動作を目指すこのトランジスタ技術は「スティープ・スロープ・デバイス(steep slope devices)」と総称される。電流の傾き(slope)が急峻(steep)なデバイスという意味だ。電池駆動型のモバイル機器やウエアラブル端末、センサーネットワーク端末などの分野で、MOSFETでは実現が難しいレベルの低電力化を担う技術として期待されている。

電流の立ち上がりを急峻にする(東芝の資料)
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