初代「はやぶさ」が探査した小惑星「イトカワ」と、「はやぶさ2」の目的地である小惑星「1999 JU3」の大きな違いは組成だ。イトカワは岩石を主体としたS型小惑星だった。それに対して1999 JU3は炭素を含むC型小惑星である。また、1999 JU3は望遠鏡を使った地上からの分光観測により含水シリケイトという、水分子を含んだ鉱物が存在しているらしいことが分かっている。炭素と水は、共に生命にとって重要な物質だ。これをもって「1999 JU3に生命がいる」とは考えにくい。しかし、太陽系の中でどこにどの程度の炭素や水が、どんな形で存在しているかを知るのは、生命の起源を探るために大変重要なことだ。

 初代はやぶさには、赤外線で鉱物の種類を調べる近赤外線分光器「NIRS」(Near InfraRed Spectrometer)というセンサーが搭載してあった。波長が0.85μ~2.1μmの近赤外線でイトカワ表面を観測し、鉱物の種類を調べるセンサーだった。はやぶさ2には、このNIRSの発展型である近赤外分光計「NIRS3」というセンサーが搭載される。NIRS3は、NIRSの観測波長を1.8μ~3.2μmと、より長波長側にシフトしたセンサーだ。3μm帯の赤外線を使うと、鉱物の中に含まれる水分子を検出できるからである。

 ところがこの長波長化によりNIRS3は、はやぶさ2において、最も開発に難航した機器の一つとなった(図1)。その開発経緯を、初代のNIRSから継続して開発に携わった安部正真・宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所准教授にお聞きした(図2)。

図1●近赤外分光計「NIRS3」
画像:JAXA
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図2●安部正真・JAXA宇宙科学研究所准教授
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