2014/11/26 00:00
久保田 博南=ケイ・アンド・ケイジャパン 代表取締役社長(医工連携推進機構 理事)

 前回のコラムでは、ヘルスソフトウエアの動向についてコメントした。このコラムに関しては、関係者から少なからぬ謝辞をいただき、うれしく感じている。今回は、その延長として、健康機器そのものの規制の在り方や業界への要望などについて書いておきたい。

改正法でも解決されない持越し課題

 「医療機器」という呼称の入った改正法がスタートした編集部注)。間際になって、ようやく具体的な通達類が矢継ぎ早に発信されてきたため、医療機器業界にとっては、やや戸惑いの様相を呈している。

編集部注)2014年11月25日に、改正薬事法、すなわち「医薬品医療機器等法」が施行

 その一方で、全くといっていいほど手の付けられていない「グレーゾーン」があることも指摘しておきたい。

 基本的な定義とか範囲に関わる事項なので、本来なら法律の冒頭にでも明確化されるべきなのだが、規制側も被規制側も「さわらぬ神に…」というような対応に終始している。実は、前回のコラムでも触れているのだが、今回はこの点に関してのみフォーカスしておきたい。

 ときに「非医療機器」とも呼ばれることもある膨大な機器群の存在は、誰も否定できないだろう。問題は、「医療機器」とのすみ分けが不明確なところにある。

 というのは、ヘルスケア領域を対象とする機器群は、近年になって急速に広まってきており、近い将来にはさらなる展開が予想される。その一因となっているのがIT関連機器との融合であり、スマホの機能の一部としての商品化が急ピッチに進んでいるという現状がある。

 その意味からも、すぐに手を打つ必要がありそうな点について明らかにしておきたい。

健康機器・医療機器の境目のない具体例

 下表に代表的な健康機器を列挙し、医療機器との関係という視点からの現況を示した。

健康機器と医療機器のオーバーラップ(図:著者が作成)
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 その中で最も普及しているのは歩数計(万歩計という呼称もある)で、健康ブームに乗ったヒット商品といえる。もともと、1日の歩数を数えることが主体だったため、健康機器という範疇にとどまっていた。

 ところが、内蔵するセンサー技術などの進化から、ジョギングにも使え、継続時間・スピード・距離なども測定可能となった。さらに、加速度の測定などから活動量、すなわち一日のエネルギー消費量も算出できる機能も加わってきた。こうなると、本来、体動センサーという名称で市販されている幾つかの医療機器とオーバーラップする部分が出てきて、双方からの相互乗り入れという状況を呈しつつある。

 これと同様なケースでは、体重計の内容変化が現実問題として表面化してきた。こちらの場合は、体重計に体組成を計算できるとされる機能が加わったことによる。体組成計は体脂肪量や率を計測する医療機器として存在し、それはクラス2の範疇にある。

 この両者に共通するのは、健康機器から出発していつの間にか医療機器のゾーンに入り込んでしまったという事実だ。

 これらとは逆に、医療機器をスタートとしている好例に血圧計がある。こちらは、流れとしては医療機器にオリジナリティーがあって、次第に健康機器としての利用価値が出てきた例である。この場合、通常では医療機器としての認証基準に適合している製品がほとんどと考えられるので、法的な条件はクリアしている。

規制当局、開発サイドともに課題認識を

 ごく最近の医療機器展示会で、韓国の医療機器メーカーから興味深い話を聞いた。体脂肪計を開発したのだが、同国の「医療機器法」に基づいて規制当局に確認したら、明らかに医療機器なのでこのままでは売れない、と指導されたとのこと。日本と中国では売られているのに韓国国内では不可能なので、日本での販路を探しているという話だ。

 韓国での判断は極めて正論で、それにしたがって行動しているメーカーにも同感の意を示した。それに対して、我が国の状況を鑑みるにつけ、この製品に関するあまりにも安易な考え方に疑問を大きくした。ここで指摘したいことは、こうした事実を黙認し続けることが望ましくないという点に尽きる。

 おそらく、日本ではこの問題を意識せずに、ことなかれ方式で物事を進めてしまっている危険性がある。万が一、「医療機器でない」という判断に立つとしても、メーカーサイドだけでも自主規制をする必要があるだろう。一つは「活動量・エネルギー消費量」「体組成・体脂肪率」といった定義の明確化や測定精度の開示、もう一つは「安全性・有効性」の保障も必須だ。第一、いくら健康機器といっても、人体の測定と診断・管理を目的としているわけだから。

 幾つかの健康機器を例題として提示してみたが、この分野のセンサー技術とソフトウエアは急速に進化している領域でもあり、近未来に新製品が出てくる可能性もある。真に役立つヘルスケア領域の機器やシステムとなるために、この課題が存在することを関係者に強く意識していただきたいと感じている。