年功序列・終身雇用といった人事制度は事業の変化ほど迅速に変わりません。その結果、環境の変化に組織が追い付かなくなってしまい、エンジニアが頻繁に辞めるようになってしまったように感じます。

 具体的な例としては、携帯電話の変化はすさまじいものがあります。90年代は日本企業が強かった携帯電話もフィンランドのノキアが世界の市場シェアトップを獲得。そのノキアの携帯電話事業でさえも、スマートフォンやタブレットへの変化に乗り遅れ、携帯電話事業は売却、リストラされました。日本の電機メーカーでは携帯電話以外でも液晶テレビやパソコン事業がかつては大きな利益を上げましたが、今やリストラの対象です。

 エンジニアは専門性が高いというのは、「手に職がある」反面、「つぶしがきかない」面もあります。かつて企業の利益に大きく貢献した功労者が、10年後にはリストラで解雇されることもあり得るのです。以前の日本企業では、事業に多少の変化があっても終身雇用が保証されていました。それが、業種にもよりますが、終身雇用がもはや保証されないケースが増えてきたのです。

 企業も以前は事業を変える時にはできるだけ人は解雇せず、社内で他の事業に人を異動させ、新しい技術を取得するように再教育していました。例えば工場を海外に移す場合には、製造に関連するエンジニアに設計を再教育する。

 ところが、これした終身雇用を守りきるやり方では変化のスピードに間に合わなくなっているのです。企業も敗色濃厚な事業は人も含めて売却し、新規事業を立ち上げるには同時にその分野のプロを新規に雇用する場合が増えているのではないでしょうか。

 このように技術や事業の変化が激しい時代には、エンジニアもプロスポーツ選手のように「稼げる時に稼ぐ」ことが必要になりました。しかし、「稼げる時に稼ぐ」は、「若い時に働いた対価を年を取ってから報酬として受け取る」年功序列型の人事制度とは相容れません。その結果、エンジニアは優秀な人から辞めていくのではないか。

 そのような状況ではエンジニアは事業が好調な時、「自分を高く売れる時」に、海外の企業に高給で引き抜かれるのは仕方のないこと、自分を守るための合理的な行動でしょう。企業の組織の変化が追い付いていないと感じるのは、リストラをする一方、重要なエンジニアを繋ぎ止めるための努力、処遇の改善はまだまだ不十分。エンジニアを続けざまに引き抜かれ、企業の競争力を落ちるまでは変わらないのかもしれません。