日本が世界に誇る上下水道や交通システム、エネルギー・プラントといったインフラの海外展開は、世界で日本の存在感を打ち出す起爆剤となるだけでなく、建築・土木、ICT(情報通信技術)、電機・電子、エネルギーなど、様々な成長産業に波及効果を及ぼす。これまでは必ずしもうまくいったとはいえない日本のインフラ輸出を成功に導くには、未来予測が欠かせない。進出する国の歴史的、社会的、経済的要因を踏まえて地域に合わせた未来戦略を構築する必要がある。そのための基礎情報を体系的にまとめた「インフラ産業 2014-2023」の著者で、世界のインフラ事情に詳しい日本総合研究所の時吉康範氏が、世界のインフラ産業の将来像を展望する第2回。(日経BP未来研究所

産業発展に電力は不可欠の要素

 インフラ形成において重要と思われる(1)電力・ガス産業、(2)水産業、(3)運輸交通産業、(4)情報通信産業、(5)静脈産業の五つの産業分野の将来動向を概説する。

(1)電力・ガス産業
 産業発展のために電力は不可欠の要素であり、安定・効率供給のための技術開発と投資も進むと思われる。電源構成別では、火力発電は今後も一定の比重を占めるが、環境配慮の意識が進むため、今後は再生可能エネルギーの導入が進むと思われる。なお、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で動向が注目される原子力発電については先進国では抑制傾向となるが、新興国においては今後も一定の導入が見込まれる。ガスは電力発電の原料という側面があるが、シェールガスなどは、特に石炭や石油などの従来の資源に対しての有効な代替物として注目されている。なお、化石燃料の利用については、環境配慮の観点からCO2の発生をどのように抑制するかという観点からの研究開発と投資促進が要請される。

 電力のマーケットについては、2012年から2035年にかけて、非OECD圏の石炭火力発電が大きな伸びを見せると予想される。金額にして1兆1580億米ドルで、セクター別で見ていくと水力を超える。一方、OECD圏の風力もそれに匹敵するほどの規模となると考えられる。OECD圏において石炭火力はさほど増えないが、投資額で見ると大きい。先進国で建築する際には、より高効率の技術を求める圧力がかかるためイニシャルコストが上昇する。投資額で見ると、新興国と先進国では約2.5倍の差があるが、実際の発電ベースでは差はさらに広がるだろう。

 ガスのマーケットについては、インドネシアから日本へ輸入される天然ガスは、将来的には減少し、逆に、現在は極めて少ない米国からの輸入量はシェールガスの開発によって将来は大幅に増加すると予想されている。また、ロシアから日本への輸入量は増加する見込みである。なお、中東からの輸入量は減少し、オーストラリアからの輸入量は増加、アフリカからの輸入量は大きく増える見込みである。

(2)水産業
 世界の人口は増加しているため、1人当たりに必要な水の量に変化がないと仮定しても、全体として必要な水の量は増加していく。また、経済発展に伴って都市化、工業化が進むと工業用水が増えるだけでなく、都市の生活レベルの向上によって、1人当たりの生活用水の使用量も大きく増加する。その結果、2025年には、2000年と比較して約30%、2015年比では約20%の需要増が予想されている。特にアジアは世界に必要とされる水の60%近くを占めており、今後も水の使用量が大きく増加していく。そのため、アジアを中心として、今後の水不足が大きな問題として認識されている。

図1:世界の水ビジネスの市場規模(推計)
出所:経済産業省、『インフラ産業2014-2023』(日経BP社)
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 水ビジネスはすそ野が広く、市場規模も大きいと言われており、世界全体の市場規模は111兆円と推計される。ボリューム・セグメントとしては上下水道が大きい。しかし、今後伸びる分野としては、例えば再生利用水に関しては現状1000億円程度の市場が、2025年には2.1兆円程度まで成長する。海水淡水化も現状では0.5兆円程度であるが1兆円規模まで倍増が期待できる。さらに、管理・運営サービスまで含めると0.7兆円から3.4兆円と大きく伸びると予想される(図1)。

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