急速な成熟化で時差がなくなる若者の消費トレンド

 もともとエリア的に近く価値観のベースも似ているアジア各国の若者たちは、これまで以上に共通項を持ち始めている。実は、これは日本企業にとって好機である。日本は、世界に類を見ないほど「世代論」の分析が発達した国だからだ。日本で培った方法論を生かして、アジア全域の若者たちの価値観やライフスタイルの共通項を抽出し、彼らに共通に通じる商品を開発する取り組みの重要性が高まっているのだ。

 若者の世界では、アジア各国の消費トレンドに時差がなくなっている。かつて、日本と、他のアジア諸国における若者の消費スタイルには、明確な違いがあった。国による文化や生活習慣、政治体制を背景にした違いはもちろん、経済的な発展ステージに大きな差があったからだ。

 しかし、この10年で状況は大きく変わった。アジアでいち早く先進国の仲間入りした日本を追い掛けるように、韓国や台湾の経済が急成長した。中国や東南アジアの国々は、高水準の経済成長の真っ直中にある。中国や韓国、インドネシア、タイなどで同じ商品、サービス、ブランドに接する機会が若者の間で広がった。

 例えば、現在、東南アジアの国々に住む若者の間で流行している商品やトレンドは、「スマートフォン」「SNS」「ファストファッション」「スポーツタイプの自転車」「美白」「韓流」「大型ショッピングモール」「均一価格ショップ」などである。こうしたキーワードを見ると、今や日本の若者のトレンドとほとんど違いがない。タイのように好景気が続きながらも、生産年齢人口の低下や賃金上昇を背景に、そう遠くない将来に成熟社会に入っていきそうな国もある。

 中国では、一人っ子世代の第1世代で1980年代生まれの「80后(バーリンホウ)」や、その次の1990年代生まれ世代「90后(ジョーリンホウ)」の間で、日本の若者と同じように「草食化」が進んでいる。

東アジアの若者の価値観は、日本の若者に近づいている。図は『若者研究 2014-2018』から
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 これまで80后は消費意欲や上昇志向が高く、高度経済成長の申し子と見られてきた。しかし、給料がなかなか上がらない状況や、高学歴ワーキングプアの出現、所得が低い親の面倒を見なければならないといった社会環境を背景に、自国のGDP(国内総生産)の伸びとは裏腹に若者の意識は超現実志向へと向かっている。経済成長を実感できない現状に、「失われた20年」に生きる日本の若者と似た印象を日々の生活の中で抱いている。

 韓国も、これから日本の「失われた20年」に相当するフェーズに突入する可能性が高く、成熟ステージに入ってくるだろう。これからは過去10年のような高い成長は見込めないし、高齢化の問題も日本と同じように深刻化してくるはずだ。