日本発・医療機器開発促進のために(2)

立ち位置と重点課題の再確認を

2014/03/09 14:30
久保田 博南=ケイ・アンド・ケイジャパン 代表取締役社長(医工連携推進機構 理事)

 我が国の医療機器産業の実態はどうなっているか――。「欧米に遅れ劣った」というなら、どこに解決点を見いだすべきなのか。大きな課題はどこにあるのか。また、その対応策をどう打ち出すか、などについて考えてみることにしよう。

自社の現況把握から出発

 前回のコラムでは、製品ごとに歴史的な観点からの流れについて俯瞰した。その結果として見えた「オリジナリティーへの偏見」に関し、別の角度から切り込んでみたい。

 下図は、ごく一般的な製品化へのステップモデルを示したものである。よく目にする基本モデルには違いないが、「医療機器・健康機器産業」ならではの特徴もある。

製品化へのステップモデル(筆者が作成)
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 今回は機器開発ステップごとの課題の抽出について焦点を当ててみよう。

 主題は、現業各社の立ち位置、しかも、各開発テーマの現状把握にある。なぜなら、意外にも当事者が見失いがちなのが、「自分の立ち位置」なのだ。今、もしも開発中のテーマを抱えているなら、この図の中でどの地点を進行中なのかを自覚することをお勧めしたい。それにより、近未来的な目標や達成するべき標的が明確になるはずだ。

 技術者や技術系企業が陥りやすい問題点が実はここにある。明らかに偏重思考と思われるのが「研究重視」という傾向だろう。日本の技術者個人としても団体としても、基礎研究に没頭しすぎている現状がある。自己主張や自信過剰という悪癖は、医療機器業界にもまかり通っているため、実の本人が気付くことが難しい。

 「じっくりと研究基盤を築くことがよい製品を生む秘訣」と勘違いしているのだ。そのために、第1ステップで立ち往生しながら要らぬ努力をし、時間の浪費をしていることさえ自覚できないでいる。

重要ステップの見極め――商品化へのチャレンジ

 具体例として、日本がもっとも弱い心臓ペースメーカ産業について考察してみよう。なぜ日本企業は手も足も出ないのか、という普遍的な疑問が発せられ続けて久しい。

 かつて、製品が出始めた1960~70年代頃の状況を振り返るなら、国内においても大学の研究者や企業の技術者を含め、数多くの基礎的な研究な続けられたことがある。心臓ペースメーカのリード線や駆動電池の研究だけでも多くの研究があった。

 にも関わらず、現況を見る限り、この分野における日本企業の製品実績はほぼゼロと言っていい。強いてあげるなら、部材供給の役割程度といえばよいのか。

 この製品は、欧米の商品化戦略に屈してしまった典型的な事例である。この屈辱的な状況を認めつつも、なぜこうなったかを考えておく意義はある。失敗例の中にこそ、往々にして次なるヒット商品を生むべきヒントがあるからだ。

技術屋のエゴを廃せ

 基礎研究から始まる発明など、より自己主張のできる仕事への熱心さにおいて、我が国の技術陣の優秀さは他国に劣ることはない。だが、いざ商品化などの実業において、その努力や闘争心がないことを如実に感じることができる。

 医療機器全般を見渡してみると、その開発過程の一番重要なステップが「商品化設計」にある。どんな製品たりとも、実用化企画やデザイン設定、生産設計といった内容の業務を通して、戦略的な段階を踏まなければならない。つまりは、ここを最重点施策として再確認することが必要となる。

 前回のコラムにおいて、米国をして“事業化職人”と呼んでみた。かなりの分野において、このステップでの集中度が行き渡り、「真の技術」を会得している、と言い切れる。

 日本の心臓ペースメーカの失敗は、このステップでの敗戦ということも可能だ。いくら優秀な要素技術を磨いても、商品としての「価値」を産み出すことに意欲を示せないなら、ユーザーが満足する製品を生み出せるはずがない。スピーカの性能だけ向上させても良いオーディオ機器にはならない。

 優秀な技術というのは、単に「測定精度がよい」とか「今までにない手法」というようなものではない。確実な製品として仕上がるための「低価格化」「使いやすさ」「有用性」というような普遍的で泥臭い技術こそ、そこに商品価値も生みだせる。

事業化成功への分かれ道はどこか

 もう一度、前のモデルステップに戻ろう。

 事業化に当たっての重要ステップが「商品化ステップ」にあることに間違いない。にもかかわらず、「日本初の技術を」と言われ続けているがゆえに、最初の「基礎研究」や「機能試作」という中で右往左往していないかどうか、改めて自問してみてはどうだろう。

 それより、基本的な製品スペックを作り上げることに、目標を切り替えるべきだ。しかも、二の矢、三の矢も視野に入れ、商品としてのレパートリーを広げることも目標としたい。

 新しい商品としての価値を見いだせるかどうかは、このステップこそ勝負の分かれ目になることを肝に命じておくべきだろう。