未来は3Dプリンターで食料を出力する?

 備蓄用の食料のことを考えていたら、3Dプリンターの記事に目がとまった。昨年からNASA(米航空宇宙局)は、宇宙食用の3D“フード”プリンターの研究に資金投入している。決まったものしか食べられない宇宙食を、少しでもおいしいもの、出来たてのものにすることで、宇宙飛行士のモチベーションを高めようという取り組みだ。第一弾の3D「ピザプリンター」の試作品は既に完成したという。

 今年1月に米国ラスベガスで開催された民生機器関連の展示会「2014 International CES」では、3Dプリンターメーカーの米3D Systems社が「ChefJet Pro」を公開した。チョコレートや砂糖と水、香料から好きな形の菓子を三次元造形できるという。さらにこの会社と米国のチョコレート製造会社であるThe Hershey社が、複数年の提携契約を結んだとのこと。今後、お菓子を含むさまざまな食品の造形を可能にする3Dプリンターの開発を進めるという。

左は、3D Systems社の3D“フード”プリンター「ChefJet Pro」。右は、同プリンターで出力したお菓子。「2014 International CES」に出展した様子(写真:日経エレクトロニクス)
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 現在の3Dフードプリンターは、ピザ生地やトマトソースなどの食材を層状に出力したり、砂糖水をノズルで噴射して自由な形に造形したりするレベルにとどまっている。だが、将来的には乾燥させた炭水化物やタンパク質などの食品素材を、プリンターヘッドで水や油と混ぜ、さまざまな形や食感の食べ物を出力させることも想定しているようだ。

 食品素材を備蓄しておき、インターネットで料理のレシピを受け取れる環境があれば、3Dプリンターで食品を“調理”できるようになる時代が近付いているというわけである。ICT(情報通信技術)と食の融合が生み出す新たなビジネスだろう。

 世界の食料需要について、FAO(国際連合食料農業機関)の報告書では、アフリカやアジアの経済発展による生活水準の向上によって一人当たりの摂取カロリー量は増加し、2050年に平均3130kcalになると予想している。ただ、農業生産性の向上などで穀物生産量も増えるため、中期的には世界全体で食糧需給はひっ迫しないとの見方が強い。

 それでも、世界的な異常気象や災害によって新鮮な食料が手に入りにくくなったとしたら…。雪に閉ざされながら、家の中の3Dプリンターでピザを出力している未来の自分の姿を想像してしまった。それが幸せかどうかは分からない。それでも、ICTや3Dプリンターによる新たな食ビジネスの可能性は、未来の消費社会を予見させる興味深い取り組みになりそうだ。