センサー技術の進化、スマホの普及が後押し

 この分野で活躍する技術の代表は、生体情報を計測する各種センサーである。センサー技術の進歩により、従来は主観的評価しかできなかった多くの生体情報が、いつでもどこでも気軽に計測できるようになり、個人が客観的に自分の健康状態を評価できるようになっていく。

 急速に普及するスマートフォンやタブレット端末が、生体情報の計測環境の広がりを後押しする。センサーで計測した情報を、これらのモバイル端末経由でリアルタイムにインターネット上に送信できる環境が、新しいサービスを創出していくことになるだろう。モバイル端末向けに健康管理用のアプリケーション・ソフトウエア(アプリ)を開発するツールの整備が進み、アプリが増え、さまざまなニーズに向けたサービスの多様化が進んでいく。

 生体情報は周囲の環境情報や生活情報と関連付けられ、インターネットのクラウド環境などで統合的に解析・評価されるようになる。この環境は、病気の予防や早期発見システムの実現につながっていく。「ヘルスインフォマティクス(健康情報科学)」などを用いた推論エンジンの開発が進み、商品やサービスに応用されるようになりそうだ。

 例えば、生体情報と、その日の天候状況を関連付けて、健康や生活のアドバイスを提供するサービスなどが広がっていくだろう。人の体調は気圧、気温差など天候状態の変化に大きく左右される。この気象現象が人に与える影響を研究する「生気象学」の成果に裏付けられた解析に基づいて、摂取した方がいい食材や、おすすめの献立、栄養情報などを利用者に提示する。

 こうしたサービスは、特に慢性的に不定愁訴(「頭が重い」「イライラする」といった自覚症状はあっても、検査では原因が見つからない状態)を持つが、健康管理意識が低い人にとっては導入を促す魅力的なツールとなりそうだ。

 生体情報センサーは今後、身体に触れずに測る非侵襲計測、かつ無意識に計測できる方向に技術が進化していく。生体情報を活用する際の費用対効果を高めるためには、短時間かつ安価に計測できることが望ましいからだ。

 例えば、血液成分検出では、血液を採取しないで計測(非観血)できる近赤外線を用いたセンサーの開発が進んでいる。コレステロール値や血糖値、老化の原因物質であるAGE(終末糖化産物)値を計測するセンサーである。非観血による計測は、結果が即座に分かることも採血に比べた大きなメリットになる。血圧についても腕に巻くバンド(カフ)を使わずに測定できるシステムが登場していくことになるだろう。

 見守りサービスでは、生体情報の計測による健康管理サービスと融合させながら、SNSを活用した新しいタイプのシステムを実現する動きが活発になりそうだ。例えば、生体情報を用いた健康状態の評価を、あらかじめ登録しておいた家族や担当医にSNSを用いて通知するようなサービスである。

 今後、健康管理サービスや見守りサービスでは、日本版のCCRC(終身型高齢者施設)への対応が進むだろう。ここでは、ネットワーク型とワンプレース型という大きく二つのタイプのシステムが登場する。

 ネットワーク型は、在宅支援診療所や介護施設、デイセンターなどの複合施設と、地域の高齢者の住宅をネットワークでつないだシステムだ。この通信環境を活用して、個人の健康状態やニーズに応じたさまざまなサービスを提供する。ワンプレース型とは1カ所の自立型住宅の中で医療や介護、生活サービスの充実を図り、高齢者に新しい生き方を提案するシステムである。

 こうした取り組みの成否は、費用対効果の高い健康管 理システムや在宅見守りシステムの実現に掛かっている。加えて、利用者が効果を実感し、「恩恵(ありがたさ)」を感じられるサービスを実現することが、継続的な利用につながる。誰もが簡単に操作でき、科学的根拠に基づいた価値ある情報を提供するサービスの実現が求められている。