「Steve Jobsに学ぼう」
「第二のSteve Jobsはどこに居るのか」
「Steve Jobsに続こう」
「Steve Jobsが居ないAppleはもうダメだ」
「Stay hungry, Stay foolish」

 10月5日にSteve Jobsが亡くなって以来、Jobsの話題でもちきりです。技術と直接は関係ない人まで、とうとうとJobsについて語っている。フラッシュ・メモリを開発していた私は、自分の製品の最重要な顧客がAppleだったので、Appleとは深くお付き合いしました。Steve Jobsは凄い人だとは思うけれど、突然の礼賛と神格化のような風潮には少々戸惑っています。

 そもそも、Appleは大企業ですから、全てをJobsが決めていたわけではないでしょう。私はもちろんJobsと直接やり取りしたことは無いのですが、ビジネスで付き合ったAppleは、

・果敢に新しい技術を使う、リスクを取って最先端の半導体を採用
・半導体メーカーを安心させず、一社購買は極力避ける
・常に半導体メーカー同士を競争させる
・時にはベンチャー企業の技術も積極的に採用
・付き合いが長い会社でも、技術で後れを取ると、平気で見捨てる
・逆に経営面で苦しむ半導体メーカーを資金面でサポートすることも

のように、技術の目利きに優れた会社でした。しかも、

・決断がどの会社よりも早く
・新技術の採用を決めたら、一気に大量発注

技術だけでなくマネージメント面でも、世界のどのエレクトロニクス・メーカーよりも優れていたと思います。日本の電機メーカーは最先端の製品をなかなか採用したがらず、Appleが採用した技術を、後から真似して使っていたことが多かったのではないでしょうか。

 AppleはJobsに象徴されるような、製品のデザインやユーザーエクスペリエンスばかりが取り上げられます。極端な意見としては、「Appleは技術が無い」などというのがありますが、とんでもない誤解です。AppleはiPhoneやiPadに搭載している半導体を自社で製造していませんが、半導体技術を深く理解し、最先端の半導体製品の仕様の策定をリードし、半導体企業の開発を牽引しています。自社で製造することだけが、技術開発ではないのです。

 こういったAppleの技術の判断とリーダーシップは素晴らしいのですが、技術の細部を全てJobsが決めていたわけではないでしょう。Appleの社内に小Jobsと言えるような優秀なエンジニアが多数いて、各エンジニアが自律的に動いている組織に私には見えました。

 そもそも、シリコンバレーではJobsだけが特別な存在ではないでしょう。古くはIntel、HP、Sun Microsystems、Oracle、Cisco Systems、AppleやYahooから、最近のGoogle、YouTube、Twitter、Facebookまで、シリコンバレーは数多くの起業家、ベンチャー企業を育んできました。Jobsそのままのような人物は確かに出てこないでしょうが、Jobsとは異なった面で素晴らしい才能を発揮する起業家が、シリコンバレーから今後も次々に出てくるでしょう。

 なぜ日本には起業家が生まれないか。