世界の新車販売台数は2025年には年間2億台を超える

 図2は、世界の新車販売台数の実績と予測である。筆者は、2025年の年間販売台数が現在の3倍以上、2億台を超えると予測している。これは、先進国では高齢化や都市集中で緩やかにクルマ離れが進む一方で、中国・インドでは先進国の半分程度まで自動車が普及する、という将来シナリオに基づいたものだ。

 2008年の中国の新車販売台数は940万台。翌年には4割近くの増加となる1360万台を販売し、米国を追い抜いた。2010年は1800万台で、2011年は2000万台を上回ることが確実視されている。2015年の販売台数は2130万台と予測した。ずいぶん大きな数字だと感じられるかもしれないが、現実に照らしてみればむしろ控えめであることが分かると思う。

 インドは「『サスティナビリティ』が決める未来---「中国」がもう一つできる日」で解説したように、これから「人口ボーナス期」に突入する。経済成長率は中国とほぼ同じペースであり、人口の伸び率では中国を上回る。リーマンショックの影響をまったくといっていいほど受けなかった国でもある。そのインドの新車販売台数は、2009年に約250万台に達した。中国が毎年300万~400万台上積みしている現実をみれば、2015年には1000万台を超える市場規模にまで成長していても、何ら驚きはない。

 中国とインド以外にも、約30億人もの「第三世界」がある。その大半は両国よりも所得水準が高い。こういったことからも、世界の自動車市場は、台数ベースで現在の5~6倍に膨れ上がるのは確実だろう。

図2 未来予測レポート 自動車産業 2011-2025
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2025年には新車販売の約1/3が電気自動車に

 筆者は、2025年には新車販売台数のうち約1/3、台数にして6000万台以上が電気自動車(EV)になると予測している。先進国でもEVの割合は増えるが、世界的に割合を高める原動力となるのは中国とインドである。先進国では、高齢化や都市集中などを背景に新車販売の絶対数は減少傾向に向かうだろう。その限られたパイをエンジン車、ハイブリッド車、EVが分け合うかたちになるはずだ。

 米国で化石燃料の消費量が飛び抜けて高いのは、一人ひとりがマイカーで移動する「車社会」だからである。都市設計やライフスタイルを急に変えるのは難しいが、エネルギーを変えることで化石燃料の使用を減らすことはできる。近年の米国では、大規模なシェールガス開発が進んでいるので、地球温暖化対策を棚上げにしてでも、これを積極的に利用していくことになるだろう。シェールガスの台頭で、米国ではエンジン車が多く生き残ることになると考えられる。

 欧州は環境や資源に対する意識が高く、EVを積極的に推進するだろう。しかし、フランスやドイツでは、トラックやバスの約9割がディーゼルである。ディーゼル車はガソリン車と比べ燃費が約3割よく、排気ガスも比較的クリーンという。乗用車もフランスは半分、ドイツは1/4をディーゼルが占めている。この状況をEVでひっくり返すには相当の時間を要する。さらに、欧州の消費者は自動車に関しては保守的な考え方を持つユーザーが多いので、「EVは面白みに欠ける」という評価は根強く残るだろう。このことからも、エンジン車は長く生き残ると予測できる。

 石油価格は再び上昇傾向となり、日本と米国でハイブリッド車のシェアが拡大するだろう。だが、2015年ころには、エネルギーや天然資源など、あらゆるものが足りなくなるという懸念が強まり、「サスティナビリティ」に対する意識が高まっていく。多くの材料を使った複雑なテクノロジーよりも、軽くて小さくシンプルなものを追求したほうがずっと良い、という雰囲気へと変わるはずだ。そこでEVへの注目が一気に高まるだろう。

 ロシアやブラジルなどでは、エンジン車の割合が「高止まり」の状態が長く続く。ロシアは国内で石油が豊富に得られるため、エネルギー確保の心配が当面ない。EVが苦手とする寒冷地であることも一因だ。ブラジルもバイオエタノールの生産が盛んで、持続的にエネルギーの確保ができるため、主力はエンジンのままだろう。ただし、その他の新興国には中国やインドから低価格の電動モビリティーが大量流入し、徐々にEVがシェアを拡大すると予測している。

 一方、中国とインドでは、人口爆発と経済成長によって、エネルギーの安定確保が急務となっている。1km当たり1円程度で走れるEVはランニングコストの点で非常に魅力的な存在といえる。中国の1人当たりGNI(国民総所得)は約3500米ドル、経済的に発展途上にあるインドは1000米ドル程度に過ぎない。けれど、経済成長に伴って、移動や輸送手段としての自動車の需要は切実なものとなる。中国とインドは、車両価格とランニングコストの安さから、EVを主軸に据えて猛烈な勢いでモータリゼーションを進めていくだろう。

 自動車に「電化」という新しい流れが加わることで、新興国メーカーは先進国メーカーのキャッチアップが容易になる。部品が調達しやすくなるからだ。中国はエレクトロニクス分野の一大生産拠点になっているので、電子部品の大半を自国で調達できる。産業育成という観点からも、自動車の電化は中国にとって歓迎すべきことだろう。10億人単位という巨大な内需によるスケールメリットを発揮して、海外にも積極的に輸出し、世界全体のEVの普及率を押し上げることになりそうだ。