「原発は即時に停止すべきだ!」
 「自然エネルギーはコストが高過ぎて、脱原発は絵に描いた餅だ!」

 福島の原発事故をきっかけに、ドイツ・スイス・イタリアなどでは原発の段階的な停止や原発の導入を見送る決定がされました。日本でも原発推進か、脱原発かの議論が活発に行われています。ソフトバンク社長の孫正義氏のように、原発を停止し自然エネルギーを用いた発電技術や、省電力技術に注力しよう、という脱原発派。原発依存を将来的には減らすにしても、現在の自然エネルギー発電や省電力技術の高いコストを考えると、すぐに原発をやめるのは無謀である、というのが原発派でしょうか。

 日本では、約1年に1回は定期点検のために原発を停止させるため、もし点検後に再開できないと2012年の6月には国内の全ての原発が停止すると言われています。原発を再稼働すべきか否かは、原発と自然エネルギーの発電コストの比較という単純な問題ではありません。

 「地震や津波などの自然災害のリスクに対して原発はどの程度安全なのか?」
 「原発のリスクが電力を主に使う都市部ではなく、一部の地方に集中しているのはおかしいのではないか?」
 「しかし、原発に関する補助金で原発がある地方が潤っているのも事実だし・・・」

など、様々な要因が関係する難しい政治的判断が必要とされます。ある新聞社が6月10日までに実施した47都道府県の知事に対するアンケートによると、11人の知事が将来的に原発を「やめる」または「減らす」と回答し、「増やす」と答えた知事はゼロ、他大部分が態度を明示しませんでした。クリーンエネルギーとして原発を推進していた日本の政策は、転換点を迎えています。日本にとって、震災と原発事故が重なり辛い時期ではありますが、エンジニアは、逆にこれをバネに自然エネルギーや省電力技術を推進する、大きなチャンスと捉えるべきではないでしょうか。

 先週、京都でVLSIシンポジウムという半導体技術に関する国際会議で、新しい半導体メモリに関するパネルディスカッションにパネリストとして参加しました。新しい半導体メモリは、データセンターなどのITインフラやパソコンなどの電子機器の省電力技術として期待されています。この新技術の事業化に関して、日本・米国・韓国・台湾のパネリストの議論が集中したのは技術の細部よりは、

 「リスクが高く、開発費が高額な新技術の開発に誰が投資するのか?」

 経験則的になってしまいますが、研究所で生まれた新技術を製品として事業化するためには、それに携わる研究者の人数が決定的に重要です。既に製品として使われている既存技術の開発には数多くのエンジニアが携わっています。一方、事業化できるかどうかわからない新技術には、経営者も投資家も大きな投資は避けるので、研究は少人数で行っていることがほとんどです。