東日本大震災から一カ月以上が経ちますが、被災地のみならず首都圏でも未だに落ち着かない毎日が続いています。しかし、そろそろ5年後、10年後、20年後を見据えて、復興計画を作る時期になりました。現在は、電気・水道・ガスといったライフラインの復旧や仮設住宅の建設など生活基盤の復旧が行われていますが、復旧の次には復興になります。

 復興では被災地が将来にわたって自活していけるような、生活基盤・産業基盤が必要です。津波が来ない高台に住宅地を配置するまちづくりの計画や、太陽光や水力発電など再生可能エネルギーを活用した地産地消の電力システム、IT技術を駆使してまち全体の電力効率を高めるスマートシティなど、国や県などが主導すべきマクロな復興計画づくりが議論され始めました。

 このようなまちづくりに加えて、被災地が経済的に持続可能な経済基盤を確立するための産業振興策も必要です。持続可能な経済基盤をつくるとは、民間企業が地元に投資を行い、人を雇用する。投資から売り上げを立てて投資を回収する。そして、収益の中から再投資を行う。以上の投資・回収・再投資の好循環を長期間にわたって回し続ける仕組みづくりが必要になります。今回のコラムでは、この仕組みづくりのためのビジネスプラン作成について書きたいと思います。

 東北地方は元々過疎化・少子高齢化などにより、経済基盤の弱体化が懸念されていました。また、産業振興は一時的に国や県がお金を投じてまちを整備したり建物を建設すれば良いものではありません。歴史的にも、社会主義国の計画経済の失敗を見れば、国が主導したトップダウンの経済発展が大変難しいことがわかります。

 米国のシリコンバレーは起業のメッカといわれており、Apple社やGoogle社など米国経済を牽引する巨大企業を生み出してきました。これは、国や州などのリーダーシップで生まれた結果ではありません。むしろ、個々のエンジニアが「自分の開発した技術を実用化したい」という思いからベンチャー企業を起業する。厳しい競争を生き残ったベンチャー企業が発展して大企業になり、結果としてシリコンバレーにエレクトロニクスの大きな産業基盤ができ上がったのです。つまり、トップダウンのリーダーシップではなく、数多くのエンジニアのボトムアップの活動により、シリコンバレーは作られたのです。

 被災地の産業基盤の確立には、エンジニアをはじめとする多くの人々が数多くの事業を提案し、その集合体として、マクロな経済を復興させる――。大変時間のかかる話かもしれませんが、トップダウンよりはボトムアップを得意とする日本ではこのやり方しかない、と私は考えています。もっとも、シリコンバレーの真似をして、エンジニアがベンチャー企業を起業する必要は必ずしもありません。各エンジニアの置かれている状況に合わせて、自分に合った事業の創造を行えばよいのです。

 この産業振興案の提案は、MOTではビジネスプランの作成ということになります。ビジネスプランとは事業計画の概要で、技術で差異化を行う製品開発の場合には、事業の目的・事業を行うメンバー(経営者や技術者)のチーム編成・市場の規模と成長性・競合と比較した技術面等の強みや弱み・事業に必要な投資金額・想定されるリスクなどをまとめたものです。

 ビジネスプランの中では、特に、なぜあなたの事業が競合に比べて勝るのか、について説得力を持たせることが重要です。ビジネスプランは最初から詳細に作る必要はありません。まずは非常に大雑把な骨格を作り、投資家や顧客、協力企業と議論する中でブラッシュアップし、より現実的で詳細なプランにしていくのです。この方法をエンジニアであるあなたが身につけると、様々な可能性がグッと広がります。