このようにして約半年間に渡りネット販売動向を観察してきたが,どうも今後の可能性は大と結論づけられるようだ。そんな状況の中で,国際電子商取引はどのように進めたら良いのだろうか? 9月になってアリババの香山誠社長にインタビューする機会を得た。約1時間という短い時間ではあったが,香山社長の口からは,ネットショッピングに対して多くの興味深いコメントが発せられた。

アリババ社長の香山誠氏
アリババ社長の香山誠氏

香山氏 「アリババは,1999年に世界の工場として中国が着目された時代に設立されました。有力なサプライヤーを探しにウォールマートが注目,さらには仕入れを殺到してゴールドラッシュを迎え,3年後には登録サプライヤーが100万社までに急増しました。日本語でのサービスは昨年に始めたばかりですが,同様に大ブレイクが起きるのではないかと思っています。

 現在,興味深いのはBRICs(ブラジル,ロシア,インド,中国)からの売り上げが6割を占めていることです。中国だけではないBRICs,そしてVISTA(ベトナム,インドネシア,南アフリカ,トルコ,アルゼンチン)における国際ネットショッピングの可能性は大きいといえるでしょう。たとえば1000万人以上の大都市が33ある中国ですがが,インドには100万人以上の人口を擁する第2級以上の都市が80ありますし,2020年には人口が中国を抜くとも言われています。ネットの普及率と後進国の経済普及は比例するわけですから,今後も新興国の経済発展に伴い販路を拡大していけるチャンスです。

 ネット販売で全方位外交を展開すればいいのです。『世界規模で欲しい人に欲しいものを売る』という考えで。日本の高水準の製品にもっと自信を持ち,明快な販売解説を構築することにエネルギーを使い売っていけば成功するはずです。安く売るのは後追いのアジア企業に任せておけばいいでしょう。後追い企業は,そのうちに飽きられて長続きしない場合が多いですから。」

 中国と米国との架け橋としブレイクしたアリババは,現在では新興国を中心にサービスが拡大しているようだ。

香山氏 「とにかく日本の中小企業を応援したいんです。今,海外でモノを売ろうとすると,現地との往復,許認可申請,資金管理,違法コピー対策など市場開拓や経営維持にあまりに手間がかかりすぎて,中小企業のキャパを超えてしまうのが現状です。中小企業の鬼門はマーケティング不足とデジタルデバイドと英語への苦手意識にあるように思いますが,現実的にネットユーザーの8割は英語圏以外の人々なので,英語は上手でなくともも充分だと思います。中小企業の経営者は新規の開拓となると展示会頼みであるケースが多いのですが,ネット販売は英語で24時間世界に公開されている展示会と考えればいいんです。中には自動販売機だと誤解している人もいるかもしれませんが,そうではなくて街のコンビニ。お客さんをよく見て,高品質な商品特性が見てすぐわかるように表現を工夫し,売った後のサービスに全力で当たる。そういったネット上の商売のあり方に本気でかかれば,品質が確かでありさえすれば売れるんです。

 多くは語れないのですが,多治見のセラミックタイルをインドのゼネコン経営者が自宅用に購入してみたところ「これはいい」となり,会社で代理店契約を申し出て来た例もあります。日本製のヤニ取りフィルターが,接着剤をまったく使っていないという解説を映像を交えてアピールし,中国製900社を尻目に拡販している例もあります。安心安全を証明すれば日本商品は世界市場で競争力を発揮できます。」

 どうやら,中小企業にはとてもメリットがありそうである。一方,大手も同じ使い方をすれば良いのだろうか。香山氏は,ちょっと違った使い方を大手には薦める。

香山氏 「 大手企業にとっては,国際市場で宝の山を当てるテスト・マーケティングができると考えるのはいかがでしょう。アリババのサービスは月額5万円,年間60万円です。最小リスクで最大効果が期待できると言えるのではないでしょうか。さらにリピーターとして固定客になってくれる可能性があります。」

 アリババが日本で本格的にサービスを開始してから約1年。順調に登録サプライヤーは増やしているものの,まだ爆発しているとは言えないようだ。

香山氏 「まだ日本に本格展開を初めて1年しか経っていませんが,サイトに登録している日本企業は一年で10000社増えました。多くのサプライヤーは「ほんとにそんなうまい商売があるのか」と疑っている状態です。成功事例を紹介したいのですがが,うまくいったサプライヤーは真似をされるからと取材を拒否するのです。我々としては,頭が痛いところです。

 中国がネット購入は個人輸入とみなして課税の対象としたことは,会員数を増やす点においては一見すると不利なような感じもしますが,きちんと法整備をいただけるよい機会になるのではと歓迎しています。当面は税関業務の混乱はあるでしょう。ですので,半年くらいの間はサイトの中国語化と現地語でのチャットなどのコミニュケーション機能を充実するなでおの準備をしておくことで明日につながると思っています。」

 最後に香山氏は,近年のインターネット環境の急速な変化が,どのような影響をもたらすかに,簡単に触れてくれた。

香山氏 「アリババは,現在の顧客数が1300万人で,24時間市場は開いています。これからiPadやインターネットTVなどが普及すれば,インターネットショッピングもマウスやキーボードを使わずに指やテレビコントローラーで簡単に操作できるようになります。そうすると,お金を持っている中高年例層のお客様が増える可能性があります。」

 このように,香山社長のコメントのはしばしには,日本製品の良さを世界で認めたもらいたいという彼の思いがこめられていた。筆者の思いも同じである。

 この半年間で得た情報をまとめてみたが,経産省でも国際電子商取引は重点ポイントにおいているという。特に近隣のアジア商品圏を筆頭に日本製品の国際販売網を確立してゆくとのことだった。国を挙げて,是非盛り上げていったもらいたいものだ。

 最後に国際インターネット・ショッピングで売れるためのポイント3カ条を紹介しておこう。

(1)他社が簡単にマネできない自社製品の詳しい内容を画像,映像,アニメなどにして,パッと見てすごさがわかる図解を中心にPRする。
(2)機械翻訳でもいいからとにかく顧客からのメッセージにこまめに答える人員を用意するなどして頻繁にコミニュケーションを絶やさない。
(3)中国に販売先を限定することなくBRICs,VISTAなど世界各国を対象に商品を限定するなど少しづつテスト販売しながら,顧客の反応を観察して売れ筋を見極めてゆく。