鋳型の素材の鋳物土は、粘土、川砂、釜を鋳造した後に崩した鋳型から採取する焼き土に、場合によってすさ、もみがらなどの繊維を混ぜ合わせて調整する。これらを粒子の粗いものから段階を踏んで細かなものへと順に塗り重ねていくことで、1500℃以上にもなる溶解した鉄を流し込んでも崩壊しないだけの強度を確保する。

 鋳型の層は粗い土から細かい土の順で、あらがた、一分挽き、五厘挽き、三厘挽き、挽き上げの五層からなる。順に細かくした鋳物土は、それぞれ目の大きさの違うふるいを通して分けられる。

 大西はまず、枠に粗い鋳物土を盛って「あらがた」を作る。馬と呼ばれる道具を使って木型の軸を固定し、何度も回転させ、鋳型を形成していく。以降、新しく挽く分だけ鋳型を削り取り、それぞれの鋳物土を足して回転させていくと、最初はごく粗い目だった表面が次第に細かな目となっていく。三厘挽きの後に、鐶付の鋳型を埋め込み、最後に絹目通しをした細かな土を泥状にして挽き上げると、鋳型の完成となる。そのつややかで端正な肌が釜肌のベースとなる。

鋳型の層は、あらがた、一分挽き、五厘挽き、三厘挽き、挽き上げの五層からなっている。最後の方になると、ごく滑らかな肌となる。(写真:大西清右衛門美術館提供)
鋳型の層は、あらがた、一分挽き、五厘挽き、三厘挽き、挽き上げの五層からなっている。最後の方になると、ごく滑らかな肌となる。(写真:大西清右衛門美術館提供)

「素材それぞれに特徴があるんですわ。焼き土を多くすると割れにくくなりますけど、型が挽きにくい。埴汁に粘土を多くすると滑りやすうなって、挽きやすうなります。ところが入れすぎると、乾燥や焼成の時に縮みが生じて割れやすうもなる。そんな素材のバランスは、釜に応じて変えるわけです。けど、これならこうと決まったものはないんです。そのときそのときの勘が大切になってくるんでね」

 鋳物土の調合だけでなく、素材選びも大切な仕事の一つである。

鋳型に使う土や砂。
鋳型に使う土や砂。

「地場の素材だけやのうて、自分の望んだ素材を今も探し続けてます。京都はものづくりに必要な、多種多様な材料が手に入る地域なんで、大西家では近世、桂川の砂や山科の白土、木節粘土(きぶしねんど)など近隣で採れる素材を使うてきました。ただそれだけやなく、地方の粘土やケイ砂などを取り寄せることもあります」

 釜作りには、何よりもまず良い鉄が不可欠だが、鋳型に使う砂もまた大切な素材である。けれど、人馬を使って砂を遠隔地から大量に運び込むことは現実的ではない。このため、良質の砂を近隣で確保することは鋳物作りにおいてとても大事な要素だったのである。例えば下野国(栃木県)で作られてきた天明釜の製作には、近隣を流れる渡良瀬川の砂が使われていた。その砂の恩恵があったからこそ、鋳物の一大産地たり得たのであろう。ある鋳物師(いもじ)の家では、「泥一升、金一升」ということが言い伝えられてきたという。