台貼表装では台紙はこのように刳り貫かれる。
台貼表装では台紙はこのように刳り貫かれる。

 ただ、その本紙は台紙にそのまま貼り付けられるわけではない。本紙の裏に当たる台紙部分を糊代のみ残して刳り貫き、本紙をその糊代部分のみで接着するのである。その糊代の幅は1分に満たない。それが、次に施される裏打ちによって、あたかも1枚の紙のように、本紙と台紙とがしっくりなじむ仕組みになっているのだ。厚みの不均一をなくし、湿度変化によるヨレや掛軸を巻く際にできるシワなどを極力防ぐための工夫である。

 台紙に貼られて体裁が整った本紙は、一文字・中廻し・上下と、順に裂地を「付け廻し」され、掛軸としての体裁を整えていく。ただ、細い糊代で接着されている状態では強度が足りない。そこで、裏面全体に裏打ちを施す。

補強のために施す「折れ伏せ」。
補強のために施す「折れ伏せ」。

 その前に施されるのが部分補強だ。本紙や台紙などで以前に折れが生じていた部分は、表装し直してもそこから折れシワが発生しやすくなっている。そのような部分には、裏側から細長く切った和紙を貼り付けていく。「折れ伏せ(おれぶせ)」と呼ばれる作業である。

 その後に、背面から裏打ちを施す。今回は、まずは「中裏打ち」が施された。上下に用いた裂地が古裂で腰がなくなっていたため、裂の部分のみ施すことに決めたのだという。裂地の状態によっては施さない場合もある。

 それが終われば、最後の裏打ち「総裏打ち」である。文字通り裏面全体に和紙を張り、掛軸全体があたかも1枚の紙のごとく一体になるよう仕上げる。

年数を経て生成された接着力の弱い古糊。
年数を経て生成された接着力の弱い古糊。

 まずは噴霧器で、全体に湿りが与えられる。そこに、宇陀紙(うだがみ)を継ぎながら貼り込んでいくのである。接着剤には「古糊」を使う。表具制作では通常、2種類の糊が使い分けられる。「肌裏打ち」や「付け廻し」で用いる新糊、「増裏打ち」「中裏打ち」「総裏打ち」に用いる古糊である。

 新糊は小麦粉から糖質を取り除いた小麦澱粉に水を加えて1時間ほど煮たもの。接着力が比較的強いので、これを薄く塗って紙を貼り合わせれば、刷毛でなでる程度である程度の接着強度が確保できる。

 もう一方の古糊は、大寒の頃(1月21日前後)に作った新糊を甕に入れて、床下など適度に湿気のある冷暗所で7~10年ほど寝かせて発酵させたもの。表具制作に特有のもので、接着力は極めて弱い。だからこそ、表具に重宝されるのだともいえる。