幅1分に過ぎない糊代で継ぎ合わせる。
幅1分に過ぎない糊代で継ぎ合わせる。

 紙同士を貼り合わせることもある。例えば今回制作している掛軸の場合、本紙は冊子本から切断した断簡で、寸法が小さい。このまま表具をしてしまうと、掛軸自体がかなり小さくなり、床の間とのバランスが悪くなる。このため、断簡・短冊・小色紙など小型の本紙を表装する場合には、大きな台紙に本紙を張り込んで、台紙ごと表装するのである。

 その際、いくつか問題になることがある。

 まずは、どのような紙を台紙として使うかだ。表具に使う裂と同様、せっかく本紙が古くても台紙が新しければ雰囲気が損なわれてしまう。台紙にも本紙と遜色のない味わいが求められるのだ。基本は、裂地の取り合わせと同様に、時代を合わせること。この掛軸では、本紙の筆者である松尾芭蕉とほぼ同時代、江戸前期に活躍した狩野派の絵の本紙のうち、上部の余白部分を切り取って使った。適した時代の紙がない場合は、紙に「時代付け」を施して使う場合もある。染料などを使い、あたかも時代を経た紙のような表情を生み出すのである。

図8

 次は、台紙の大きさと本紙を貼る位置である。本紙の大きさはその作品ごとに様々で、それに応じて台紙の大きさを決める。特に「定寸」というような決まりはなく、その本紙ごとにバランスで決めていくのだという。本紙を貼る位置も同じで、「台紙の中心よりやや下目」という基本ルールはあるが、やや下目が何センチ何ミリなのかというルールはない。あくまで人の感覚、表具師の美意識に委ねられる問題である。だからこそ、表具師はせっせと美術館やギャラリーに足を運んでは「名品」と呼ばれる掛軸を見て回る。単に鑑賞するのではなく、そこに込められた名人の技、意思、感覚を汲み取り、自分の肥やしとするのである。

図9

「いろんな作品に接していると、同じ台貼表装でも本紙が古い時代のものと新しいものでは貼る位置が微妙に違っていたりとか、そんな法則性みたいなものが見えてきたりするんですわ。それを踏まえながらも、最後に位置を決めるときはあくまで感覚。台紙の上に置いてみて、あ、このへんかな、というところを探すわけです。でも不思議なことに、一度置いてみて、もう一度それを置き直してもやはり同じ位置になっている。人の感覚というのはすごいもんやと思います」