ようやく、ひとつの仕服が完成した。

 職家としての力量を示すプレゼンテーションを重ねながら、千家十職の名に恥じぬ感性と技術を磨き続けていく。それを家元に問いながら、常に水準を高く保ち、自分たち一家を支える商いを回していく。それが千家十職に連なる袋師の矜持なのである。

 最後の最後の最後。仕服は桐の箱に収められた。箱の姿にも友湖ならではの思いがこもる。

「茶入、茶碗、釜など、茶道具にはそれぞれの素材に沿った持ち味があります。だったら箱の厚みや様子も、それぞれに合ったものにしたい。仕服は布のものなので、それに合った『軽やかさ』がほしいと、僕のところでは箱の職人さんにお願いしています。それも、箱職人さんが通常作りはる箱の、もう一段薄くなった感じをいつもお願いしているんです」

 その桐箱を手に取った。羽のように軽やかで、上品だ。

 もうひとつ、箱について友湖には密かな配慮がある。桐という木の素材はどうしてもソリが出る。特に蓋はソリが出やすい。それを避けたいので、箱職人にはあらかじめソリも計算して作ってほしい、と念を押すそうだ。

 友湖が筆に墨を含ませた。署名を箱の横にしたためる。決して上には書かぬところにも、あくまでも主役は別にいる、という仕服ならではの「沿うた」感覚が貫かれているのだった。(文中敬称略)