今回の茶入には、名物裂「定家緞子」の写し裂を使う。

「胴のカーブこそは『目の仕事』ですね。カーブをどう出すかに関しては、ずっと仕事をしてきた感覚としかいいようがありません」

 胴の部分は表裂と裏裂の2種類。縫い上げたときにピタリと合うよう、特に裏裂の寸法に、微妙な調整を行う。型紙ができたら、そこに茶入の形や、いつ誰から預かったか、裂は何を使うか、などを朱墨で書き留めておく。仕服が完成したら、工房にはこの型紙と、底に使った裂の切れ端しか残らない。その意味で型紙は大切な控えとなる。友湖の書棚には、代々がおこした型紙を張った記録帳が大切に仕舞われている。

 型紙をおこしたら次は裂の裁断だ。今回の仕服に、友湖は「定家緞子(ていかどんす)」と呼ばれる名物裂の復元裂を使った。定家というと、藤原家ゆかりの文様かと思いがちだが、実は藤原定家は関係ない。京都島原で名高かった花魁、定家太夫の衣装に用いられていた、ということで名付けられた名物裂だ。太夫の衣装とはいえ、渋い緑の地につる唐草と牡丹の花があしらわれた裂には、まさに侘びた茶の感覚がある。

「今回の茶入の場合は、金襴の仕服がすでにありましたので、それとは違う感じを選んでみました。定家の文様の由来についても、みなさん、藤原定家をまず思い起こしますやろ。それとは違うのんで、かえって面白いものです。お茶席での会話の端緒になればいいと思うています」

型紙に沿って表裂を切る。
裏裂の海気も表裂と同じように型紙をあてて裁断する。
型紙に沿って表裂を切る。

 縫い合わせたとき、どこで模様をピタリと合わせるか。そのような計算を働かせながら、切れ味のいいハサミで裂を切る。なにぶん貴重で高価な裂である。見ているこちらは思わず緊張してしまう。しかし、友湖の手は迷いがない。ジョキッという小気味いい音が工房の机の上で響く。

 裏裂も同様に裁断するが、裏に使うのは「海気(かいき=海黄・海貴・改機とも書く)」というすべりのよい絹だ。表裂、裏裂とも、型紙をあてる前に、綿の薄い布で裏打ちする。そして、裏打ち後に型紙をあてて、朱の墨で線を描いていく。

 裏打ちした表裂、裏裂は口と、切り上げから上の部分を中に折り、鏝(こて)で「つがり」をつける折り目を定着させる。茶入の胴の大小にかかわらず、「緒」を通す「つがり」の「山」は片側六つと決まっている。茶入の口はたいてい小さい。そのような口にあわせて六つの山を均等に作ることは難しい。集中が必要な作業だ。

 底は厚めの裏打ち紙に糊をつけて裂をピンと張っていく。かつて糊はご飯粒を練って作っていたが、今では市販の糊に切り替えている。仕服の「美」の基準に関しては簡単に変化を受け入れないが、材料に関しては時代時代で最適なものを選んでいくのが土田家のやり方だ。

 胴と底の部品がこれで揃った。次はいよいよ縫う段だ。(文中敬称略)