外側の「蒔き地」を終えたところ。
内側の「切子付け」。
内側を篦で「錆付け」したところ。

 椀の内側には、さらに下地を付けていく。硬く練った水練り砥粉10に対し、地の粉3、漆6(重量比)の割合で調合した下地を刷毛や箆で塗り付ける「切子付け」、さらに水練り砥粉と漆を2対1(重量比)で混ぜた下地材を箆で付ける「錆び付け」である。

 こうした下地の工程で使う地の粉は、珪藻(プランクトンの一種)殻などの化石である珪藻土が主成分。珪藻土には小孔が無数に開いているので、それを漆で固めた層には微細な空隙が多くできる。この層が断熱効果を生む。だから、熱い汁を入れても椀の外側はさほど熱くならない。さらに、この層が主に熱的ショックを緩衝する。この下地が、この上に形成する漆の層を破損から保護する機能をも果たすのである。

 こうした工夫は、すべて先人たちが編み出したもの。どうやら年月の蓄積は、知恵を底知れないものにしていくらしい。(文中敬称略)

篦による「錆び付け」作業。