塗師屋小刀で篦の形に削る。
錆漆による「目摺り」作業。
布目の「目摺り」の完了。
刷毛による「地付け」作業。

 バイアスに切れば布にも無駄が出るし、切るのも面倒。しかもこの布は塗り込められ、完成後は見えなくなってしまう。その見えない部分にも本間のこだわりがある。布の貼り付けには糊漆という、米糊と生漆を練った漆を使う。

 ただし、布を貼っただけでは、他の部分との間に段差ができてしまう。この段差を埋めつつ下地を整える工程が「目摺り」で、漆芸で「錆」と呼ぶ材料を使う。生漆と砥粉(粘板岩や頁岩の風化によってできる微細な粉)を混ぜて練ったもので、これを椀の内と外に擦り込む。

 こうした材料を調合して練ったり、ペースト状のものを器物に塗りつけたりするために使うのが箆で、桧の薄板を削って自作する。市販のプラスチック製箆もあり、練り混ぜなどには使うが、適度なしなやかさと丈夫さ、そして厚さや形を微調整できるという点でも、桧の箆には遠く及ばない。この箆を作製するために使う小刀は塗師包丁、塗師屋小刀、短刃(タンバ)などと呼ばれる、片刃で先まで刃が付いた特殊な刃物である。箆の先を切り揃える際には先を使う。他に鯨の髭(ひげ)でできた鯨箆もある。余分な漆を掻き取ったりする際に使う。

「蒔き地」作業。

 目摺りが終われば、次は「地付け」である。椀の内側に、糊漆(糊と漆をまぜたもの)と地の粉(じのこ)を混ぜたものを塗る。本間のやり方は、刷毛で塗り、箆で押さえるというもの。師の赤地友哉が行っていた方法である。薄く刷毛付けすることで全体の厚さをほぼ一定にでき、さらにそれを箆で押さえることで細かな厚みのムラを均すことができる。この段階から「手回し轆轤」に載せて塗る。これも均一に塗るための工夫で、左手で椀を持って手を回転させて塗るよりも轆轤に載せて椀を回転させる方が均一に塗れるという。轆轤には真空ポンプが取り付けられており、この吸引力で回転台に椀を吸いつけ、固定する。この状態で轆轤を回転させるのである。

 次が「蒔き地」。椀の外側全体に生漆を塗り、そこに地の粉を蒔いて漆に吸着させ、均一に下地を付ける。こうすることで、椀の外側に彫られた筋を埋めてしまうことなく下地を付けることができる。この作業は地の粉の粒度を替えて2回施す。