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なぜ13枚なのか

『中川木工芸 比良工房』制作のちろり、ぐいのみ。

 「これが湯豆腐桶ひとつ分ですね」と、桶職人の中川周士が見せてくれた椹(さわら)の側板の山。数えてみると13枚あった。楕円形の湯豆腐桶は、まん丸い湯桶と違って少々複雑な構造をしていて、決まった幅の4本足がついているのだが、残りは1枚1枚バラバラの幅の側板をつなぎ合わせる。パーツの幅がバラバラで、どのように毎度同サイズの桶に仕立てるのかと不思議に思うが、心配には及ばない。釣竿のような細い竹尺に円周分の長さの目印がついていて、広狭入り混じった側板をその長さまでつないでいけばよいのである。

今回作った湯豆腐桶ひとつ分の側板、計13枚。

 機械を使った桶作りでは、決まった寸法の側板を決まった枚数つなぎ合わせて桶を形作る。しかし手作りの場合は、一つの湯豆腐桶を作るのに、必ず側板が13枚なくてはいけないということはない。竹尺の目印までの長さがあれば、それより多くても少なくても桶になるのである。こうすることで、材料の関係で幅が狭くなってしまった板も使用可能になる。不揃いなパーツを無駄なく使い切るにはこの方法が一番なのだ。

 もちろん目の前の13枚の側板は、幅はバラバラでも、表裏の丸みと側面の角度はすべて計算通りに削られている。いくつもの工程を踏んで1枚1枚念入りに整えてきたのは、今この段階で円周分の枚数をつなぎ合わせた時、隙間なく、しかも正確な円筒や楕円筒状になるようにするためだ。

 作る桶の種類や大きさによって素材を選ぶところから始まり、桶には不向きな部分を避けながら割鎌で材を打ち割っていく「木取り」、銑(せん)で板の表裏を剥いで丸みをつける「外丸削り」「内丸削り」、長台で側面を斜めに削って桶の胴の勾配を作る「落ち」、正直型の丸みと角度にぴったり合うように細かい調整を加えていく「正直」と続く。作る桶によって側板の丸みや勾配、角度は決まっているわけだから、すべての作業が関連し合ってひとつの流れの中にある。だから、必ずこの順に行われなければいけない。