柾目であることの意味

 桶は柾目(まさめ)で作るのが通例である。柾目とは、年輪が板の表面に対して垂直に走るように板を切り出した状態のこと。板の表面には細かい真っ直ぐな木目が上下に走ることになる。その逆が板目(いため)。表面からは、木目は不規則に現れる。たとえば丸太の状態から板を切り出すとすると、通常は輪切りでなく縦に刃を入れる。この時、丸太の上から見ると輪状に年輪が入っているが、この年輪に対してどの角度で刃を入れるかで柾目か板目かが決まる。年輪に対して直角に切断するのが柾目だ。

 中に液体を入れて持ち運ぶ道具として扱われることが多い桶は、空になっている時間が長い。つまり、桶そのものは濡れている状態よりも乾燥している時間の方が長いと想定できる。だから、柾目で作る。木材のうち緻密な年輪の部分は水が浸透しにくく、その間の柔らかい部分は水が浸透しやすい。この部分に水分が滲みれば側板が横方向に膨張し、側板と側板をぴったりと密着させる。中が空になれば桶が吸収した水分も抜けやすく、水分を含んだままで腐るようなことがない。

 「きっちり柾目にするためには、年輪に対して常に90度で割っていかねばならない。そのためには、たまに三角形に割って年輪の丸みに合わせるような調整を入れるのです。木目の変化しているところは外しながら割るということもやりますね。こんな細かい調整を繰り返しながら柾目の板を無駄なくとっていく。これは手作業でなければできないところでしょうね」

 同じ木の容器でも樽の場合は板目で作る。樽は中身を保存しておく容器として使われるので、中身がつねに入っていると想定できるからだ。板目の樽の側板は、水を含みやすい年輪間の部分が水を透過しにくい年輪の部分で覆われた構造になっている。このため、内部の水分が板を通して外に浸透することが少ない。一度水分を吸収するとそれが抜けにくくなるので、密閉性も高くなる。一般には気付きにくいようなところにも、自然に寄り添いつつその能力を最大限に発揮させようとする人の知恵が働いているのである。(文中敬称略)