閉じる

技のココロ

Tech-On!
日経テクノロジーオンライン

目次

  • 「打刃物」第5話 『父と子、そして使い手たち』

    「親父と意見が食い違うこともあるんです」鍛冶仕事が一段落して、父の喬庸(たかのぶ)が席を外したのを見計らったように、喜幸(のぶゆき)がこう切り出した。先ほどの焼入れ作業中のふたりのやり取りを指しているのだ。父は焼きが甘く入ったので、もう一度焼入れし直したほうがいいと言った。これに対して、息子は、むし…

  • 「打刃物」第4話 『刃物としての命を吹き込む』

     左久作(ひだりひささく)が行ってきたここまでの工程のほとんどは、鑿(のみ)の形を作るためのものだった。しかし、その中でも、鍛冶は常に鋼の組織を刃物に適したものにするため、細やかな気を配っている。中でも鍛接(たんせつ)から火造(ひづく)りという火を使う工程は、鋼の組織を決定づける上で極めて大切な工程…

  • 「打刃物」第3話 『見えないところに手をかける粋』

     誂(あつら)え鍛冶、左久作(ひだりひささく)の午後は、ナラシの仕事から始まる。除冷を済ませた鑿(のみ)を取り出し、アールの付いたナラシ床という金床の上で叩いて「しゃくみ」をとる。 「火造りで赤めた時点で、鋼が少し膨張しているんです。だからなましている間に少し縮んでしまうんです」 鋼が縮み、膨張率の…

  • 「打刃物」第2話 『定規の目盛り幅の誤差』

    日本の鍛冶屋は大きくわけて三つに分類できる。刀匠と野鍛冶、それに道具鍛冶だ。日本刀は、現代は美術品として扱われる。それを手掛ける刀匠は、試験に合格しなければ刀匠とは名乗れない。これに対して、生活に使う道具を作り出す匠が、野鍛冶と道具鍛冶ということになる。

  • 「打刃物」第1話 『職人のための職人』

     かつて東京には、穴大工なる職人集団がいた。穴屋とも呼ばれる彼らは、建築用木材のほぞ穴掘りを専門とする大工だった。日本の伝統的な建築は、釘を多用せず、仕口、継ぎ手と呼ばれる「木組み」で木材同士を組み上げて構築していく。突起部分の「ほぞ」を差し込むのが「ほぞ穴」である。もちろんその穴は正確に掘られてい…

  • 「茶陶」第6話 『年に2度、勝率2割の賭け』

     茶どころ宇治に限りない恵みをもたらしてきた清流、宇治川。そこに日本最古とされ、源氏物語にも登場する宇治橋がかかる。その橋を半ば渡り川上を望めば、右手に平等院鳳凰堂の甍、対岸の左手には煙突が見える。 年に何度か、その煙突は淡い煙を吐く。その下に横たわるのは朝日焼のシンボルともいえる登り窯。4つの焼成…

  • 「茶陶」第5話 『技を技にみせない技』

     永楽家の茶陶がそうであるように、京焼の窯元は多彩な技法を使い、陶器も磁器も、日本古来の作風から中国風、朝鮮半島風のものまで、茶人に愛されてきた陶磁器すべてを守備範囲としてきた。京都市内で薪を燃料に使う窯の操業が禁止されたこともあり、朝鮮風の陶器や無釉陶(むゆうとう)など土の味わいを生かした作品は減…

  • 「茶陶」第4話 『守るものと、変えるもの』

     現在、永樂家の工房にはガス窯と電気窯があり、二つを作るものによって使い分けている。しかし、昭和44(1969)年に大気汚染防止法が施行され、京都市内から木材を燃料とする伝統的な窯の操業が不可能になるまでは、小規模な焚き窯もあったという。「京都には、戦後すぐの頃で70~80くらいの窯があったといいま…

  • 「茶陶」第3話 『「らしさ」とは何か』

     永樂家では、信樂焼などの国焼きから、中国製のいわゆる唐物、朝鮮半島製の高麗もの、オランダ風のもの、さらには室町時代や桃山時代の古い様式からモダンなものまで、さまざまなやきものをモチーフとした作品を手がける。決まった種類のものを一定の量だけ作るというのではなく、ほとんどの場合は注文に応じてありとあら…

  • 「茶陶」第2話 『「写す」ということ』

    千利休によって茶道が大成された桃山時代は、日本の陶器が大きな発展を遂げた時代でもあった。技術の進歩に加え、多くの様式が生み出され多大な影響を後世に与えることになる。桃山時代こそは日本の陶芸史においては特筆すべき躍進期であり、多くの名品を生み出したという点で、一つの頂点であるともいえる。

  • 「茶陶」第1話 『日本人の不思議な愛情』

    茶の湯で使うために作られた陶磁器を「茶陶」と呼ぶ。日用雑器ではなく、「最高のもてなし」のための陶磁器、つまり最上の道具である。室町時代に茶の湯が勃興して以来、そのために使う道具には最先端の美意識が反映されてきた。

  • 「桶」第6話 言葉では伝えられないこと

     「職人の世界というのは、誰が作っても同じものができなければダメという世界。個性を消して、湯桶ならそのひとつの湯桶と一体化することが職人の本質だと思います。そう心がけることによって、品質を保ちながら後の時代につなげていくことができるんです。だから、僕は実際に祖父と一緒に仕事をすることはありませんでし…

  • 「桶」第5話 パーツから全体を考える

     「これが湯豆腐桶ひとつ分ですね」と、桶職人の中川周士が見せてくれた椹(さわら)の側板の山。数えてみると13枚あった。楕円形の湯豆腐桶は、まん丸い湯桶と違って少々複雑な構造をしていて、決まった幅の4本足がついているのだが、残りは1枚1枚バラバラの幅の側板をつなぎ合わせる。パーツの幅がバラバラで、どの…

  • 「桶」第4話 技が道具を生み、道具が技を磨く

    今日、桶と言うと、短冊形の側板を円筒形に並べて外側を竹や金属の箍(たが)で締めた結物(ゆいもの)のことを指す。この結物が、日本で水などの液体を入れる容器として全国的に使われ始めたのは室町時代。庶民の生活必需品として広まったのは、江戸時代初期以降といわれている。もちろん、それ以前から同じ機能を果たす器…

  • 「桶」第3話 今の気遣いは後工程のため

     桶は、かまぼこ板のような側板をぐるりと円筒状に組み合わせて箍(たが)で締め、底板をはめた構造になっている。この側板は原木から切り出すのだが、この工程が「木取り」で、手技の真価が問われる第一関門である。けれども、他の工程が楽かと言えば決してそうではない。実際桶作りは「手技の妙」を発揮すべき工程の連続…

  • 「桶」第2話 「木を読む」ということ

    石油原料がなく、鉄鋼技術も発達していない時代、ほとんどの器や道具は木で作られていた。ところが、木は水とめっぽう相性が悪い。まず、木は水を吸えば伸び、乾燥すれば縮む。しかもその伸縮の割合は、木材の縦横、木目の入り方などで大きく変わってくるのだ。さらに、水は木の寿命を奪う「腐食」の要因にもなる。実にやっ…

  • 「桶」第1話 手で作ることの意味

     器の力としか言いようがない。この器に入るだけで、湯豆腐という実に簡素な食べ物がおそろしく風流なご馳走になるのだ。豆腐は、ふわふわと小判型の木桶の中で揺れ動き、ふうっとすくわれるのを待っている。桶の端には炭火を入れる部分が設けられており、湯豆腐が冷めることも、煮えて鬆(す)が入ることもなくという、絶…

日経 xTECH SPECIAL

What's New!

エレキ

製造

もっと見る