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技のココロ

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日経テクノロジーオンライン

目次

  • 「釜」第6話『引き継ぐ者の覚悟』

     大西家は当代の大西清右衛門(おおにしせいうえもん)の父である先代清右衛門で十五代目。初代浄林(じょうりん)が京都の三条釜座(さんじょうかまんざ)にふたりの弟と共に工房を構えたのが元和2年(1620)前後。大西は以来400年近く続いてきた釜師の長男である。

  • 「釜」第5話『「分かっている」なんて言えない』

     鋳鉄は、炭素分が2.0%以上含まれる鉄で、鋼に比べ炭素量が多い分、硬く脆い。一方で融点が低く溶解させて加工することができるので、叩いて延ばす鋼に比べ加工性に優れる。黒鉛が振動を吸収するといった特性もある。さらに、鋳型さえ作れば同じものを量産できる上、再溶解してリサイクルすることが可能であるため、現…

  • 「釜」第4話『作れるという幸福』

     春本番にはまだ少し早い一日、大西清右衛門(おおにしせいうえもん)の工房では、鋳型に霰(あられ)を打つ作業が進められていた。作業を担当する岸野健義は、大西と芸術大学時代からの「仲間」で、大学卒業後、本格的に釜師の仕事に入った大西がスカウトしてこの工房の一員となった。それからすでに15年以上のキャリア…

  • 「釜」第3話『作為に非作為を重ねる』

     大西清右衛門(おおにしせいうえもん)の工房は、京都の三条釜座(さんじょうかまんざ)にある大西清右衛門美術館の奥に隣接する。工房へと続くドアを開け、鉄を溶解させるための炉が置かれたスペースを通り抜けて引き戸を開けると、目の前に工房の全景が広がる。

  • 「釜」第2話『錆びるけど錆びない鉄』

     茶室で、炉や風炉に据えられ「座の主人」たる存在感を醸し、松風にも例えられるかすかな音と湯気を立てている。そんな鋳鉄の釜で沸かした湯を使った茶は、苦みの中にほのかな甘みを伴い口中に広がっていく。目と耳と口。茶の湯釜は五感を使って鉄を味わい尽くす道具と言えよう。

  • 「釜」第1話『朽ちゆく様を味わう』

     形あるもの必ず滅す、という言葉がある。どんなものでも逃れ得ないこの真理に、古来人々は人智をもってあらがってきた。例えば秦の始皇帝。自らの命が永遠に続くことを切望した帝は、東方に不老不死の薬があると進言した徐福に海を渡らせ、採取してくるよう命じる。しかし、大勢の部下を引き連れて日本に上陸した徐福は帰…

  • 「表具」第5話『美の守護者として』

    北岡英芳には二人の息子がいる。長男の大幸(ひろゆき)は28歳、中京区の京表具師のもとで修業を始めて6年になる。次男の芳幸は26歳、昨年から修復を主とする表具師の工房で技術を学び始めた。「まあ、うれしいことですけど」と北岡は言う。しかし、不安もある。「息子たちの時代になっても、仕事があるのかどうか」。

  • 「表具」第4話『一番厳しい店の一番厳しい師匠』

    湿らせては干し、糊を塗っては乾かし、何枚もの紙を重ね、加湿と乾燥を繰り返しつつ強く軟らかく、しかもまっ平らな1枚の紙のような状態にしていく。これが表具づくりの基本プロセスである。この作業で肝心なのが温度や湿度との折り合い。京表具が発達した理由の一つにも気候条件が挙げられるという。盆地だから風は弱いが…

  • 「表具」第3話『「手が決まる」ということ』

    3世紀以前に中国で発祥したという表具の、歴史的な重さを印象づける出来事があった。2008年夏、北京オリンピック開会式の総監督を務めたチャン・イーモウは、モチーフとして中国の悠久の歴史のなかで生まれた「人類史に残る発明」と「特色ある文化」を盛り込んだ。その中には人類の四大発明にも挙げられる「紙」が当然…

  • 「表具」第2話『残しつつ、補いつつ』

    表具制作は、いきなり極めて重要な工程から始まる。すなわち「コンセプト立案」。全体のデザインを決め、使用する裂(きれ)などを決めるのだ。依頼主から特段の指定がない限り、表具師がその全責任を負う。

  • 「表具」第1話『床の間にテレビという現実』

    ある住宅会社が2007年に実施したアンケート調査によると、住空間に和室を求める首都圏在住者のうち、「床の間」を必要とする人の比率は30歳代では2割にも満たなかったという。特に和室に対する思い入れのない人なら、なおさらだろう。実際、すでにある自宅の床の間が、物置や格好のテレビ置き場になっているなどとい…

  • 「日本刀」 第6話 『創作ということの、本当の意味』

    「失敗したら、弟子はえらい怒りよるで。普段えらそうなこと言うてるからなぁ」。そう小声で語る河内國平(かわちくにひら)の視線の先には、細かな玉鋼が積み上げられた「てこ台」がある。城の石垣のミニチュアのように奇麗に積み上げられた状態を撮影するため、崩れ防止用に巻いた和紙をはがし、明るい場所に移動してもら…

  • 「日本刀」 第5話 『下手ということ、上手ということ』

    仕事場の窓から、斜面いっぱいに杉が植えられた山が見える。その稜線は、緩やかな波模様を描き、空と大地の淡い境目となっている。河内國平(かわちくにひら)が奈良の東吉野へやってきてから、はや37年が経った。所用で都会に出るたびに、ここの美しい風景がかけがえのないことを改めて感じるという。

  • 「日本刀」 第4話 『頂上へ至る道はひとつではない』

    職人とは何か。その定義を正確に語ることは難しい。そうでありながらも私たちは、誰かに「職人らしさ」を感じてしまうことがある。彼らが何かを共有しているからだ。

  • 「日本刀」 第3話 『伝承したいからこそ手で作る』

    「沸(わ)くって言うんやけど、鉄を溶かしてしまうわけではないんや。溶けるでなし、赤いだけでもなしっていう、ちょうどいいところ。そこで仕事やらんとあかんねん」 刀匠、河内國平(かわちくにひら)は、小割りにした玉鋼(たまはがね)を積み上げた「てこ台」を前に「積み沸かし」についてこう説明する。

  • 「日本刀」 第2話 『今なお底知れない鉄のナゾ』

    日本刀製作には、原料となる砂鉄を探すところから、鞘や柄、鍔(つば)などの刀装具作りまで、実に数多くの工程が存在する。

  • 「日本刀」 第1話 『最も強く、美しい武器』

    日本刀は武器という名の、このうえなく美しい「道具」である。かつて使い手は、これを手に敵と戦った。その時代には、日本刀の出来がそのまま自分の生死に関わっていた。いや自分だけではない。自身の肉親や家族、友人、そして仲間たちを守る生命線だったのである。

  • 「和紙」 第6話 『紙漉きになるつもりじゃなかった』

    尾崎文故(ふみこ)と娘のあかりが漉き終えた紙は、積み重ねた紙床(しと)ごと場所を移し、上に板を載せジャッキで押して水を絞る。その後、温度を一定に保つ保冷室でしばらく保管する。太陽がよく照った、晴れの日が来ると分かれば、保冷室から出して、もう一度ジャッキで絞る。そして山の上で天日で乾かす。

  • 「和紙」 第5話 『機械を入れてみたけれど』

     最初は何をしているのかわからない。あっという間に出来上がる。注意して繰り返し見ていると、途中で動きが変わるようだ。何度か上下に揺さぶると、今度は前後に流している。紙の漉き手は尾崎文故(ふみこ)。この道40年のベテランである。文故がそれぞれの手で握る棒は、桁(けた)と呼ばれる巨大な木枠の取っ手である…

  • 「和紙」 第4話 『水を嫌い、水に頼る』

     あいにくの雨模様だった。空はどんよりと曇り、ぱらぱらと小雨が降りかかる。海抜200mのこの地では、雪に変わることも珍しくないという。尾崎家の脇にあるちょっとした広場には、大きなビニールシートが山なりに吊ってある。その下には無数の楮(こうぞ)の皮。家の軒下だけでは足りず、使える場所をすべて使って、剥…

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