そんな学生たちに「就職は?」と尋ねると、「そうだなぁ、いろいろあるけど先輩の言うにはだいたい大卒初任給で月額2~3万円かな。たいていは親のコネで就職することが多いんだけど、最近は海外で勉強後に帰国して新ビジネスに挑戦するなどというやつも出てきているよ。技術系とかネット系とか」。なーんて、ボンボンにしては意外にしっかりしたことをおっしゃる。インドや中国も、経済が大いに活性化する前の段階ではそうだったが、やる気のある連中がポツポツ出始めているようだ。

 S教授との会見では「学生たちが勉強しなくて困るんだよね」的な談笑がほとんどだった。いや、それでも一応は「日本との今後のビジネスのあり方やバリの発展事情」などについても話し合った。この12月にバリで環境国際会議が開催されるとあって、特に環境技術の話題では盛り上がった。京都議定書の今後、特に世界のトップを行く日本の環境技術に関連して、バリも何らかの貢献ができないだろうかと、真剣に議論したりもしたのである。

国連気候変動枠組み条約第13回締約国会議(UNFCCC-COP13)」が2007年12月3日~14日にバリ島で開催されます。詳しくはこちらを参照


にこやかなS教授 (画像のクリックで拡大)

 その内容についてはあらためてご紹介するとして、S教授がおもしろいことを言い出した。なんでも奥様がリゾートハウスの不動産販売をしているとのこと。カタログを拝見したら、メゾネット形式、プール付き、海岸沿いの海を見渡せる掘り出し物件があるというではないか。「日本で購入すると2000万円くらいとか言ってたけど、もっと安くして差し上げなさいと言っておきますよ、ははっのは」ときた。不意の攻撃におもわずグラつき、時間が経つにつれ、かなりグラついた。

――欲しい――


おもむろにカバンからカタログを出すS教授 (画像のクリックで拡大)

 「温和な気候、海を見渡せるリゾッチャライフ…うううぅー、いいねーいいねぇー」。とりあえずホテルに帰って風呂に入りながらカタログのリゾート写真を穴の開くほど眺める。すると、心はもうリタイヤ生活満喫モードになってしまうのであった。マズイ。

 「でもなぁ2000万円なんてゆとりねぇよなぁ」と、ふと冷静に考える。悔しいから負け惜しみの言い訳を考えた。「てやんでぇ、オレの本業は教授じゃねぇ、冒険家だ。もともと一つところに居ることができねぇ性分だぁ、そんな金があったら世界中貧乏旅して回るほうがよっぽどいいぜ」と独り吼えてみた。

 このように、欲求が生じているにもかかわらず、その欲求が満たされないでいる状態を「欲求不満(フラストレーション)」の状態と呼ぶ。欲求不満に陥ると、一般に人はその障害を取り除くなどの対処行動を取るが、その対象が取り除けない場合には代償的な行動をとったり、防衛機制を働かせたりする。それでも欲求不満状態が続くと、「攻撃」「退行」「固着」といった不適応反応を生じることがあるのだそうだ

 で、我輩は、この欲求不満でイラつく自分をなだめるために何をしたか。それが「攻撃」「退行」「固着」のどれに分類されるのかよく分からんが、街はずれにあるマッサージ屋に出かけ奮発して(と言っても600円くらい)、90分コースをやってもらったのだ。リゾッチャパンフレットは目の毒だからマッサージのおばちゃんにあげてしまった。すると彼女は「人生は金じゃないのよ」とか言いつつ、しっかり机の引き出しにしまっていた。後でじっくり見る気か?

 こうして、とりあえず欲求不満をまぎらわせたら、素晴らしいアイデアが浮かんできた。「そうだ、あの美人女子大生に会いに行こう」というわけである。さっそく、彼女がバイトしている海辺のカフェに行ってみたら、何と僕を見つけるなり満面の笑顔で手を振ってくれているではないか。覚えていてくれたのだ。

――おぉパラダイス!――

 ところが話してみると「え? 私は女子大生とかじゃないよ、だからホテルなんか作らない」とおっしゃる。

――沈没――

 そこへもう一人の女性が現れた。確か、前回ここに来たときに、美人女子大生(本当はそうではなかったけど)と一緒に働いていた女性のようである。何と彼女は、僕の名前をフルネームですらすらと呼び、それから「私の担任の教授にあなたのことを伝えたら、ぜひお会いしたいとのことです」と言う。通訳を介して話をしたものだから、どうやらこの二人のことを取り違えていたらしい。

 その、本物の女子大生の彼女が「私の名はAyoです」と…(次ページへ