病院や空港などでよく見かける車イスは、フレーム材がスチール(鋼鉄)やアルミニウムである。大半は中国製で安価だが、15~20kgと重い。クルマへの積み込みや取り回しも大変である。一方、身体に障害を抱える人でも健常者のように活発に生活することが可能となるよう、軽量かつ高強度な素材を多用して作るのがアクティブ系の車イスだ。フレーム材としては、アルミやチタン、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を主に使用する。CFRPなら最も軽量で高剛性のフレームを作れるが、素材や加工のコストが最も高いという課題がある。

そこで実用金属で最も軽いマグネシウムに着目し、CFRPに匹敵する剛性と軽さを維持しつつアルミと同価格帯の車イスを製品化することに成功したのが、静岡県浜松市に本社を置く橋本エンジニアリングである。しかしながら、同社には完成品製作やマグネシウムの取り扱いの経験が無いことから、産業支援機関である浜松地域イノベーション推進機構の研究部会で知り合った仲間と提携し、車イスの共同開発、事業化を進めた。2017年4月に「MC-X」の発売に漕ぎ着けた。重量は6.2kg。マグネシウム、チタン、カーボンの高強度軽量材料を組み合わせたことにより、超軽量と高剛性を実現した。

メーカーとしての取り組みで同社が開発した製品がもう一つある。アルミ鋳造における課題解決のため、チタンを採用して開発した鋳造器具「DTi」である。

従来、アルミ鋳造では高温の溶融アルミを取り扱うラドル(ひしゃく状の器具)やカス取りなどの器具の材料として鋳鉄を用いる。しかし、溶融アルミが鋳鉄を酸化により溶かしてしまうため、一般的な鋳鉄製の器具では日々のメンテナンスを行っても約3カ月で溶損しダメになる。既製品では少しでも長持ちするようセラミックをコーティングしているが、通常1日で効果がなくなる。また、付着したアルミを手作業で取り除いたうえで、再度コーティングする作業を毎日続ける必要があるという。そこで対浸食性に優れかつ軽量なチタンを採用するとともに、面倒なセラミックのコーティングを必要としない画期的な表面処理技術を開発することに成功した。