がんの遺伝子治療に東芝が挑む、信州大と共同研究

2019/11/14 05:00
近藤 寿成=スプール

 信州大学と東芝は、ナノサイズのカプセル「生分解性リポソーム」によって遺伝子を細胞に運ぶ技術を、がんの遺伝子治療に応用する共同研究を開始した。信州大学のがん研究と東芝の材料研究を融合することで、がんの遺伝子治療の普及に貢献していく。

共同研究で目指す遺伝子治療用生分解性リポソーム技術
(図:東芝)
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 1981年以降、がんは一貫して日本人の死亡原因の1位である。そのため、がんを患っても効果の高い治療によって生存率を向上することは、社会的に重要な課題となる。この課題を解決するために、近年は次世代のがんの治療法として遺伝子治療の有効性が注目され、実用化が始まっている。

 がんの遺伝子治療は、治療遺伝子をがん細胞の中に運ぶことによって、がん細胞の増殖を抑制したり、がん細胞を強制的に死滅させたりする効率的な治療法となる。抗がん剤治療や放射線治療が効かなくなったがんにおいても、高い治療効果が期待できる。しかし現在は、治療遺伝子の運搬にウィルスを使っていることから、安全性や量産性の点で課題があるとされる。遺伝子治療を普及させるには、運搬効率に優れ、安全で量産が容易な、遺伝子運搬技術の開発が望まれている。

 そこで信州大学 医学部小児医学教室の中沢洋三教授らの研究グループと東芝は、ウィルスを使わない治療遺伝子の運搬容器として生分解性リポソームを活用する共同研究を開始した。共同研究では、信州大学の医学的知見に基づく治療用遺伝子を患者のがん細胞へ効果的に運搬し、細胞内で治療効果を発揮するため、治療用遺伝子を内包した生分解性リポソームの研究開発を行う。

 生分解性リポソームは、細胞の中でのみ分解する独自の脂質を主成分としており、ウィルスを使用せずに簡便で効率よく細胞の中へ遺伝子を運べる。また、細胞の細胞膜の特性の違いに応じて生分解性リポソームの構造を設計することで、標的となるがん細胞へ遺伝子を運べるほか、工業的なプロセスによる量産化が可能となることから、適用範囲の拡大も期待できる。

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