ミリ波を活用する技術

 サブ6は「伝送距離は長いが容量が少ない」、24GHz以上のミリ波は「大容量の通信が可能だが伝送距離は短い」というそれぞれの特徴がある。このため、カバレッジと大容量通信の両方を実現するためには、両方の周波数帯を活用していく必要がある。ところが、ミリ波は、移動通信ネットワーク上での利用技術や、それに必要なアンテナや電源の端末側への搭載技術が十分ではなかったことから、これまで十分に活用されてこなかった。ここでは次に、ミリ波を活用するために基地局側や端末側に導入された様々な技術について説明する。

 基地局からの無線エネルギーは、自身を中心とした円錐形の領域に広がるため、端末がその領域内にあれば、電波を受信することができる。しかし、前述のようなミリ波の伝送距離の課題を解決するためには、円錐形の無線エネルギーをそのまま使うのではなく、レーザーやビームのように、ある対象に焦点を当てて利用した方が効率がよい。そこで、アンテナを使って端末を追跡し、それに向けた電波のビームを形成する(ビームフォーミング)。もちろん端末側にもこのビームを受信、送信する機能が必要となるが、Snapdragon X50、X55には、この機能が内蔵されている。

 基地局からはこうしたビームが複数送信され、建物や街灯や車など、様々なものからの跳ね返りも発生する。端末側は、そうした電波の中から電波状態のよいものを見つけて利用する必要がある。ミリ波アンテナモジュールのQTM052やQTM525には配列状に並んだミリ波アンテナが搭載されており、最も電波状態のよいものを発見し(ビームトラッキング)、その電波を発する電波塔に向けてビームを送信する。端末とネットワークはこのようにして信号情報交換を行い、最適な電波を確保する。

 ミリ波は、ビルの屋上にスモールセルを設置するなどして、そのブロック全体をカバーする環境を構築可能な都市部で、その威力を発揮する。人ごみの多い都会では、通常ビルは障害物となると思われるが、ビームフォーミングとビームトラッキング技術を使えば、ビルが反射したミリ波を捉えることで、ミリ波を活用することができる。端末内のQTM052やQTM525に搭載された複数のミリ波対応アンテナは様々な方向に向いており、最強の信号情報をキャッチすると、ベースバンドモデムがスイッチ切り替えを行う。これらの処理は、ミリ秒単位の素早さで行われる。Snapdragon X55 5Gモデム/RF システムを搭載した端末では、ミリ波帯の800MHzの帯域幅とLTEを使用することで、ピーク時下りスループットで7Gビット/秒を実現可能となる。

端末内部での処理の様子
出所:Qualcomm
[画像のクリックで拡大表示]

 ビームフォーミングやビームトラッキングなど、ミリ波を活用するための情報が白書「Exploring the Potential of mmWave for 5G Mobile Access」にまとめられている。同社サイトの「Exploring the Potential of mmWave for 5G Mobile Access」から参照可能である。