米Qualcomm(クアルコム)は2019年11月7日、ミリ波対応5G端末がどのようにデータをやり取りするかを解説するコラムを自社のブログに掲載している(Qualcommのブログ)。「Snapdragon X50 5Gモデム/RFシステム」、「Snapdragon X55 5Gモデム/RFシステム」を題材に、マルチモードモデム、RFフロントエンド(RFFE)やアンテナモジュールの役割について、次のように述べている。
5G時代の標準的なマルチモードモデムには次のような要件が求められる。
- 5Gから4G/3G/2Gまでをサポートすること
- 4Gと5Gの同時接続が可能であること
- 制御信号はLTE、ユーザーデータは5Gでそれぞれ送信するNSA(Non-Standalone)5G NRに対応すること
- ギガビット級の大容量、高速通信、音声通話可能なLTEと5Gの両方に対応すること
- サブ6(6GHz未満の周波数帯)および24GHz以上のミリ波帯で、LTEより広大な帯域をサポートすること
Qualcommではこの条件を満たす製品として、Snapdragon X50 5Gモデム/RFシステム(関連記事1)を用意。5G端末向けプラットフォームSnapdragon 855(関連記事2)と組み合わせることで、4G、5G両方に対応可能なスマートフォンを実現する。データを送信するためには、信号の変調と復調が必要となるが、その処理の流れは、下記の図で表すことができる。モデムチップからRFトランシーバー、パワーアンプやフィルター、スイッチといった様々な部品を含むRFFEを介して、Wi-FiやGPSと共用可能なアンテナから送信する。これでサブ6での5G通信が可能となる。
このほか、ミリ波対応アンテナとRFトランシーバー、その他のRFFE部品をモジュール化した「QTM052ミリ波アンテナモジュール」(関連記事3)を用意。以上のチップセットを利用することで、まずは第1弾の5G対応スマートフォン、ホットスポット、固定無線アクセス対応機器開発が可能になる。
2020年に世界各地で始まる、さらなる5Gサービス展開に向けては、それぞれの地域の様々な周波数帯に対応する必要がある。Qualcommでは、Snapdragon X55 5Gモデム/RFシステム(関連記事4)を用意し、次の要件に対応する。
- 5GとLTEとで同時に同じ周波数帯を使用可能な5G/4G周波数帯共有の実現
- サブ6で最大200MHz、ミリ波帯で最大800MHzの帯域幅を確保しての高速大容量通信の実現
- 制御信号もユーザーデータも5G NRで対応するSA(Standalone)5G NRと、NSA(Non-Standalone)5G NRへの対応
このSnapdragon X55 5Gモデム/RFシステムには、「QTM525ミリ波アンテナモジュール」が含まれており、前述のQTM052が対応するn257(26.5G~29.5GHz)、n260(37G~40GHz)、n261(27.5G~28.35GHz)の周波数帯に加えて、北米や欧州、オーストラリア向けのn258 (24.25G~27.5GHz)をサポート。また、8mmより薄いスマートフォンを実現可能な極薄アンテナモジュールとなっている。
以上の製品を使うことで、様々な方式、周波数帯での通信が可能となり、5G対応スマートフォンのみならず、5G Wi-Fiホットスポット、5G対応PC、タブレット、コネクテッドカー、固定無線アクセスを使った構内設備の構築が可能となる。