富士経済(本社東京)は、全固体電池をはじめとする次世代電池の市場を調査し、「2019 電池関連市場実態総調査〈次世代電池編〉」にまとめた(ニュースリリース)。全固体電池の2018年の世界市場は、24億円(表1)。2035年には1115.5倍の2兆6772億円に成長すると予測している。

図:全固体電池の世界市場
(出所:富士経済)
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表1:次世代電池の世界市場
(出所:富士経済)
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 今回の調査が対象としたのは、全固体電池とポストリチウムイオン2次電池(LIB)(表2。全固体電池は4品目(硫化物系、酸化物系、高分子系、錯体水素化物系)、ポストLIBは5品目〔金属空気2次電池、ナトリウム(Na)イオン2次電池、カリウム(K)イオン2次電池、その他の次世代電池〕を含む。

表2:調査対象
(出所:富士経済)
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 さらに次世代電池の材料も調査し、電解質と正極活物質、負極活物質、バインダー、集電体、セパレーターを対象とした。次世代電池応用製品として自動車と電力貯蔵システム(ESS)、小型民生用途/その他有望用途も調査・分析した。調査期間は2019年5~7月。富士経済の専門調査員による参入企業や関連企業・団体などへのヒアリングに、関連文献調査や社内データベースを併用した。

 調査によると、2018年の時点では、前述の調査対象の電池のうち全固体電池のみが市場を形成している。それに対してポストLIBはいまだ市場が形成されていないものの、Liやコバルトなどレアメタルの資源リスクの高まりを背景に開発機運が高まっており、レアメタルを用いないNaイオン2次電池が最も実用化に近いとみられる。それ以外は基礎技術開発が必要な段階にあり、市場の拡大は2030年以降との予想だ。

 全固体電池の中で現時点で量産されているのは高分子系のみで、海外メーカーが電動車(xEV)向けに供給している。日本のメーカーが注力する硫化物系の全固体電池は、xEV向けで量産化・低コスト化を目指した開発が進んでおり、2020年度前半にxEVへ搭載される見込み。その他の用途では、2021年ごろにセンサー向けなどの小型の硫化物系全固体電池のサンプル出荷が始まると予測している。

 酸化物系に関しては、バルク型・薄膜型・積層型の3タイプの全固体電池と、固体電解質を主材料に微量のイオン液体やポリマーを添加したバルク型疑似固体電池を調べた。バルク型全固体電池は実用化までの技術的なハードルが高いため、バルク型疑似固体電池の製品化が進んでおり、海外メーカーが積極的に取り組んでいるという。

 バルク型全固体電池の実用化は2030年代で、xEVに採用される見通し。硫化水素が発生しない、設備投資額を抑えられるといった利点が挙げられるものの、実用化の時期は硫化物系に比べて遅れると同社は見ている。

 それらに先立ち、薄膜型は2013年ごろから製品化され、ウエラブル機器やICカード、医療用途で一部が供給されている。積層型も回路基板上で実装できることを強みとして、1次電池や電気2重層キャパシターから置き換えられるケースが見られる。今後は、薄膜型・積層型ともに量産化が進展する見込みだ。特に積層型は、生産に積層セラミックコンデンサーやインダクターの生産設備を転用できるため、設備投資を抑えながらの量産化が可能であり、受動部品メーカーによる市場参入が相次いでいる。

 錯体水素化物系全固体電池については、2020年代前半には新規電解質材料を用いた実電池化に向けた取り組みが進む見通し。2020年代後半からは製品化に向けた動きが加速すると予想する。

 全固体電池のうち酸化物系は1960年代に、硫化物系は1980年代に開発が始まったが、固体電解質は電解液に比べてイオン伝導率が低い上、電極層と電解質層の界面形成に課題が多く、技術開発に長い期間がかかってきた。しかし2000年代以降、電解液並みのイオン伝導性を持つ硫化物系固体電解質LGPSが発見され、固体電解質の界面制御方法も開発されたのを契機に全固体電池のブレイクスルーが起こり、注目度が高まっている。