バイエル薬品とAIベンチャーのハカルスは、「説明可能なAI」を利用しMRI画像の読影を支援するシステムの開発を目指す。バイエルのマッチングプログラム「G4A Tokyo Dealmaker 2019」で共同開発に向けた基本合意書を締結した。

 G4A Tokyo Dealmakerは、ベンチャーやIT企業などからバイエルが提示する課題を解決するデジタル技術を公募するもの。MRI画像の診断サポートとAIによる病変リスクのスクリーニングが今回の課題の1つだった。

 バイエル薬品の医療用医薬品部門ラジオロジー事業部ストラテジックパートナーリレーションズ&イノベーションの三川雅人部長は「ハカルスの提案は非常にユニークだった」と話す。その理由は、ハカルスが説明可能なAIを診断支援システムに適用しようとしているからだ。

 AIを活用した画像解析には深層学習(ディープラーニング)が使われるケースが多いが、「ディープラーニングで構築されたモデルはブラックボックス。結果や決定に至る経緯は人間には解釈できない」(ハカルスの藤原健真CEO)。同社はディープラーニングの代わりに「スパースモデリング技術」を採用している。スパースモデリング技術は、判断に使うためのデータを集めた「辞書」からどの要素をアルゴリズムに反映したのかが分かるという。

スパースモデリングの仕組み
(写真:日経 xTECH)
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 ハカルスはバイエル以外にも、複数の製薬企業とスパースモデリング技術を用いたAIの共同開発を手掛けている。例えば脳卒中の診断支援システムや動物用の心電図を解析してリアルタイムに異常を検知するシステムの開発などだ。

 一方バイエルはMRI用造影剤を販売しているため、自社で画像の症例データベースを保有している。今後ハカルスのAIを実際の画像を用いて評価する。

 今回G4A Tokyo Dealmaker 2019で基本合意書を締結した企業はハカルスの他、ITを活用した医薬品の受託開発を手掛けるCACクロア、治験被験者の募集業務などを手掛けるシミックヘルスケア、医薬品卸売りを手掛けるスズケン、データベース関連の事業を手掛けるディビイ、AIを活用したシステム開発などを手掛けるPros Consである。2019年10月28日に開催された「G4A Tokyo Dealmaker 2019 Signing Day」で公表された。

 発表会では他にも、2018年に契約を締結したBuzzreachが事業の進捗を報告。Buzzreachとバイエルは、医薬品の治験に参加する患者のモチベーションを維持させるためのアプリを開発している。今後バイエルの医薬品の治験で利用しアプリを評価していく方針だという。