三菱電機は、同社の人工知能(AI)技術「Maisart」(Mitsubishi Electric’s AI creates the State-of-the-ART in technology、マイサート)を用いて映像から人の骨格情報を抽出・分析し、特定の動作を検出する作業分析技術「骨紋」(こつもん)を開発したと発表した(ニュースリリース)。作業者の動きを撮影した映像から作業時間や作業ミス、ムダを自動で検出できるので、生産現場の生産性向上を目的とした作業分析の効率を高められる(関連記事12)。

 新技術による作業分析は[1]骨格抽出、[2]作業時間・ミスの検出、[3]体の動きに関する課題の検出に分けられる(図)。同社工場で新技術を検証したところ、作業分析にかかった時間は3日間だった。監督者が目視や手動計測で収集したデータを分析するのに比べると、作業分析にかかる工数を1/10に減らせたという。

図:従来の作業分析(上)と「骨紋」を利用した作業分析(下)の比較
(出所:三菱電機)
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 [1]では、映像から2Dの骨格情報を抽出。それをAIが分析し、作業内容を特定する。このとき、映像から抽出できる骨格情報は2Dの関節位置情報のため、従来は製造工程での複雑な作業の動作を認識するのが難しかった。そこで同社はAIを活用し、作業者の骨格の姿勢や動きを事前に機械学習させて作業認識率を向上させた。同社の工場における検証では、90%以上の精度で作業内容を特定し、目視による作業認識率と同程度であることを確認したという。

 これにより[2]では、作業時間の自動計測や手順抜け・間違いなどの作業ミス、ムダを自動で検出できるようになった。センサーなどの機器類を身に着ける必要がなく、作業者に負担がないのも利点とする。

 さらに[3]として、[1]で抽出した骨格情報を「動作経済の原則」(The principles of motion economy)に基づいて分析し、ムリ・ムダのある体の動きを自動で検出する。これによって、目視では見つけられなかった体の動きの課題を発見できる上、監督者が違っても標準的な作業改善が可能になる。動作経済の原則は、疲労を最も少なくして有効な仕事量を増やすための約30項目の経験的な法則。動作研究の先駆者であるF.B.ギルブレス(Frank Bunker Gilbreth)氏が提唱した。

 体の動きの課題を見つけ出して作業方法や作業環境を見直したり、ムリ・ムダない動きを指導したりすることで、作業者の動きを改善できる。従来、製造工程で発生する作業は複雑で体の動きも速いため、目視で動きの課題を抽出するのが難しかった。加えて、監督者の経験や熟練度によって抽出できる課題や改善検討結果が異なるので、標準的な改善指導ができないという課題もあったという。

 同社はこの技術を、慶応義塾大学理工学部電子工学科教授の青木義満氏らの協力を得て開発した。今後、同社の生産現場に試験導入して実用化に向けた開発を進める。2020年度以降、製造工程の監視装置や作業分析ソフトとして順次、市場に投入する計画だ。