日経 xTECH編集部員たちは普段とは違う、不穏な空気に包まれていた。それは2019年9月13日の21時、つまり米アップル(Apple)の新型iPhone予約受け付け開始のタイミングだった。

「iPhone 11 Pro」
背面の三眼カメラが印象的(写真:Apple)
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 例年は日本時間の16時予約開始だったが、今回は日本時間での21時開始。筆者はとある勉強会取材の真っ最中だった。インタビューを無事終え、ホッとした気持ちで帰りの電車に乗り込む。――「そうだ!予約する日だった」何たることか、取材にすっかり気を取られて予約を忘れていたのだ。時計は21時23分を指していた。車内で立ちながらiPhoneを取り出し、大慌てでApple Storeアプリを立ち上げて自分に割り当てられた「iPhone 11」を予約する。

 これまでの新型iPhone調達で、クジ運の悪い筆者はApple Storeへの接続で待たされ、結局発売初日には購入できないという状況に陥るのが常だった。昨年は手元のiPhoneとAndroid端末を使ってアップルと通信キャリアのオンラインストア両方での予約を試みたが成功せず、通信キャリアの店舗に並んでようやく予約できたという状況だった(iPhone XS入荷メールが届かない!雨の銀座に200人超の行列)。ところが、今年はすんなりとサイトにつながり、あれよあれよという間に端末が手配されていくではないか。受け取り場所として編集部の定番、「Apple 銀座」を指定すると、特別営業時間の8時~8時30分受け取りも指定可能な状態だった。

 実は編集部内では「今回は担当者1人だけで3機種とも購入できるのではないか」とささやかれていた。日ごろの取材の結果なのか、編集部に何人か存在するアップル愛好家の勘なのかは不明だが、とにかく複数人がそう予想し、実際に予約を試みた編集部員全員が予約に成功した。もちろん初回生産台数などの兼ね合いもあるが、入手できてラッキーという半面、「今年のiPhoneはやはり不人気なのでは?」と思わざるを得ない。

発売日のApple 銀座
通常は10時開店だが、新製品発売に伴って特別営業の8時開店だった。何か今回は印象が違うと思ったら、建物の上半分を覆うガラスパネルが1枚なくなっている(撮影:日経 xTECH)
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 そして迎えた2019年9月20日、筆者はApple 銀座に向かった。受け取り時間は10時30分~11時だ。9月10日の発表と同時に予約が開始された「Apple Watch Series 5」について、筆者の予約が遅かったのかその時間帯にしか受け取り指定ができず、それに合わせたためだ。1時間ほど前の9時30分頃に店舗付近を訪れると、今年もずらりと並ぶ行列が見えた。ざっと数えると150人ほどの人が並んでおり、行列は銀座三丁目にあるApple 銀座の前から「ショーメ 銀座本店」や「ヴァン クリーフ&アーペル 銀座本店」、「シャネル 銀座」といった高級ブランド店の前を通り、銀座二丁目の交差点を超えて「カルティエ銀座ブティック」の前まで伸びていた。

今年の行列は短めか
写真左手のApple 銀座から伸びる行列。どことなく密度感が低いように感じる(撮影:日経 xTECH)
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 まだ受け取りまでは時間がある。時間をつぶそうと、近くのファストフード店を探して入った。注文の列に並ぶと、すぐ脇の席にはiPhone3台分の箱を抱えつつ朝食セットを食べながら一心不乱にiPhoneに向かって文字を打ち込む女性がいた。箱に描かれているのは、あの特徴的な三眼の背面。ガジェット系のライターさんなのだろうかと、つい思ってしまう。

 時間になったので、再びApple 銀座から伸びる行列の最後尾に向かう。行列は若干伸びたようだ。最後尾の警備員に話しかけると、予約済みの場合は店舗近くの短い行列に並ぶように言われた。長い行列は予約なしの当日購入者の列で、観光客なのか、外国語を話す人が1/3くらいはいるように見える。どうやら予約者の受け取り時間帯ごとに余裕があれば当日購入できるという仕組みのようだ。

 通常の開店時間を過ぎた店内は新製品を見に来た客と購入客でごった返しており、アテンド役の店員と自分が立って話せるテーブルのすき間もないほどだ。さらに店内で倉庫から在庫を届ける役の店員がひっきりなしに動き回っている。さすがに来店している客は皆新しい端末に興奮気味で、同時にケースを買い求めたり、店員に保護フィルムを貼ってもらってその様子をスマホで撮影したりしている。盛り上がる様子に安堵したが、やはり熱狂というほどの熱量は感じない。

 予約通知メールを見せてQRコードを読み取り、身分証明書を提示し…という一連の受け取りが終わると、既に30分が過ぎていた。店舗前の行列は交差点まで達しないほどに短くなっていた。

無事購入したiPhone3機種とApple Watch Series 5
箱に描かれているのが本体ディスプレー面でなくカメラのある背面になった(撮影:日経 xTECH)
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