移動通信の業界団体である3GPP(Third Generation Partnership Project)は2019年7月18日、Release 16(リリース16)の進捗状況と、Release 17(リリース17)での検討事項に関する解説を、自身のWebサイトに掲載した(3GPPのニュースリリース)。この解説は、TSG RAN(Technical Specification Group Radio Access Network)の議長を務めるBalazs Bertenyi氏のオンラインセミナーからの抜粋となっている。同セミナーはもともと内部向けだが現在は3GPPのオンラインセミナーサイトで聴講できるほか、プレゼンテーション資料(PDF形式)も3GPPのオンラインセミナー資料閲覧サイトから閲覧可能となっている。

出所:3GPP
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リリース15は完了に向けた活動に

 Release 15(リリース15)では、Early drop、Main drop、Late dropの3段階に分けて、5G NR NSA(ノンスタンドアロン)版とSA(スタンドアロン)版の、基幹ネットワークと無線ネットワーク両方を含む仕様標準化を実施。現在、2019年3月版のNSA仕様を使った商用ネットワーク化が全世界で進められており、SA仕様を使ったサービスも、IoTビジネスが牽引する形で近く中国から開始される予定だ。Late dropも2019年6月に完了。LTEから5G基地局への移行を可能にするマイグレーションアーキテクチャーに関する標準仕様を定めたものになっている。

リリース15の安定化と完了に向けたスケジュール
出所:3GPP
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リリース16は2020年に仕様化

 リリース16は、様々な業界からの要望を受けた仕様改善が中心となる。2018年6月にリリース内容を確定し、現在仕様策定中。2020年3月に物理層の仕様化を完了し、無線プロトコルの仕様も同年6月完了を予定している。

リリース16の作業スケジュール
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 リリース16では、自動車、産業向けIoT、免許不要周波数帯(アンライセンスバンド)の活用を柱に作業が進められている。自動車に関しては、LTE-V2X(Vehicle to Everything)の2度のイタレーションをベースに、低遅延性を生かした5GベースのV2X仕様を策定中。産業向けIoTとURLLC(Ultra-Reliable Low Latency Communications、超高信頼性低遅延通信)については、工場自動化、Ethernetから5G NRへの置き換えを中心に進めている。免許不要帯については、従来のLAA(Licensed Assisted Access)に加えて、免許不要帯のみでの運用も対象となる。

リリース16の進捗状況
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リリース17は2021年に仕様化

 リリース17は現在計画段階だが、2019年12月までにはリリース内容を確定し、2020年より仕様策定に入る。2021年第2四半期に物理層の仕様化を完了し、同年9月にはASN.1の仕様化完了を予定している。リリース16からわずか15カ月での次版リリースとなる理由としては、5G商用サービス開始に伴い様々な機能追加要求があることが挙げられる。

リリース17の主なマイルストーン
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 リリース17に向けては、下記のように、多くの案件が検討されている。

  • NR light:監視カメラやウエアラブル端末などのMTC(Machine Type Communication)に向けた5G NR仲介機能(mid-tier)の運用最適化
  • Small data transfer optimisation:IoT用途に向けた、小規模データの上り、下り通信の最適化
  • Sidelink enhancements:車両同士の通信や、緊急時通信など、機器同士の直接通信機能の強化。このほか、スマートフォン同士の通信も想定し、6GHzを超える周波数も含む様々な周波数帯での通信も検討
  • NR above 52.6GHz:52.6GHzから114GHzまでの周波数帯の適用可能性について検討する
  • Multi SIM operation:マルチSIM対応端末の調査と仕様標準化に向けた検討を進める
  • NR Multicast broadcast:V2Xと公共安全が主な対象となる。リリース17に含めるべきかどうかの検討を進める
リリース17での検討事項(その1)
出所:3GPP
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  • Coverage enhancements:カバレッジの強化は、中国、インド、オーストラリアなどの国々での重要な課題とする
  • NB-IoT and eMTC enhancements:NB-IoTとeMTC(enhanced Machine Type Communication)についても機能強化する
  • Industrial IoT and URLLC:リリース16の主要対応項目ではあるが、最新要求案件に対して検討する

 このほか、non-terrestrial networks(非地上系ネットワーク)の検討なども行っていく。

リリース17での検討事項(その2)
出所:3GPP
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  • Generic enhancements, Power Saving enhancements:リリース17では、免許不要周波数帯での5G NRの運用やさらなる省電力化に向けた議論も進めていく
  • RAN data collection enhancements:従来のSON(Self Organizing Networks、運用中の端末や基地局からデータを収集、分析し、自律的にネットワークを最適する)やMDT(Minimalization of Drive tests、端末から通信時の無線切断やハンドオーバーの失敗などの情報を収集し、通信状況を改善する)に加え、AIの能力向上に向けたデータ収集についても検討を進める
  • Positioning enhancements:工場や建物内ポジショニングや、IoT、V2X向けポジショニング、3Dポジショニングなどにおいて、低遅延高信頼性、かつ、数10センチレベルの高精度を実現する機能の検討を進める
リリース17での検討事項(その3)
出所:3GPP
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