図1 MSCソフトウェア社長兼CEOのパオロ・グリエルミニ氏
ヘキサゴンマニュファクチャリングインテリジェンスの上級副社長も兼ねる。(写真:日経 xTECH)
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 米MSCソフトウェアとエムエスシーソフトウェア(本社東京)は、機械学習によりシミュレーション計算と同等の結果をほぼリアルタイムで得られるツールの提供など、ユーザーでのシミュレーション業務の効率化を目的とした今後の方針を明らかにした(図1図2)。「次世代の生産性を目指す」(MSCソフトウェア社長兼CEOでヘキサゴンマニュファクチャリングインテリジェンス上級副社長のパオロ・グリエルミニ氏)として、2019年7月10日に同社が開催した「MSC Software 2019 Users Conference」で公表。アディティブ・マニュファクチャリング(AM、3Dプリンティング)、複雑な現象を解析するマルチフィジックスなどの取り組みについても述べた。

 機械学習によりリアルタイムで結果を出すツールは、フランスCADLM社が開発した「ODYSSEE(オデッセー)」。MSCソフトウェアはCADLMと2019年6月に提携しており、ユーザーにはMSCソフトウェアとして提供する。既存のシミュレーション結果や、実験計画法により制御パラメーター値を変動させて得た複数のシミュレーション結果を機械学習して縮退(低次元)モデルを作成し、任意の制御パラメーター値の組み合わせについてのシミュレーション結果を即時に予測。「例えば1回の計算に5時間かかるシミュレーションの結果を2~3秒で予測できる」(エムエスシーソフトウェア代表取締役社長の加藤毅彦氏)。これにより設計作業の試行錯誤を高速化できる他、現実に進行している現象を実時間より先回りして予測可能になり、制御などへの応用も考えられる。

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図2 MSCソフトウェアが公表した新ツール・サービス提供の方針
エムエスシーソフトウェア代表取締役社長の加藤毅彦氏による説明の資料。(出所:エムエスシーソフトウェア)

 人工知能(AI)の利用に関しては、2017年5月に開発会社を買収した「VTD(バーチャルテストドライブ)」ツールキットの機能を強化。自動運転技術の開発に使うシミュレーターで、シミュレーション上のシナリオ(他の車両や歩行者の動き、信号器のタイミング、イベントの発生など)をAIで生成できるようにする。2019年末に利用可能にするという。

 AMについては、その高い造形自由度を生かして造形物の軽量化を図るため、トポロジー最適化技術のスタートアップ、ドイツ・アマンデート(AMendate)を、MSCソフトウェアの親会社であるヘキサゴンのマニュファクチャリング・インテリジェンス事業部が2019年6月に買収。「3Dプリンティングの特性を正しく反映させると、生産性を5倍や10倍、数十倍にできる」(グリエルミニ氏)。

 マルチフィジックスに関しては、複数のツールを連携させる際の精度を高める。既に流体解析の「scFLOW」と機構解析のMSC Adams、非線形構造解析のMSC Marcは相互に連携させて実行可能であり、今後は線形解析の「MSC Nastran」や音響解析のツールと連携させていく方針。加藤氏は「将来自動運転が普及すると、クルマの車内は音楽を聴いたり映画を見たり、静かに読書したりする空間になるから、静粛性の確保が今後のテーマになる。音は機構からも気流からも生じるし、材質や製造の精度にも影響されるため、さまざまな解析の連携が重要になるはずだ」と指摘した。

 MSCソフトウェアは2017年にスウェーデン・ヘキサゴンの傘下に入り、ヘキサゴンは測定装置や計測システム、製造現場の高度化に向けた成員やサービスの提供(マニュファクチャリング・インテリジェンス)などの事業を持つことから、MSCソフトウェアの技術を製造業の設計現場や生産現場に限らず多様な場面に生かす方針。製品開発初期のコンセプト検討、設計、部品やサブシステムの製造、計画、市場への投入を含めた全プロセスをカバーする考えを「スマートデザイン、スマートファクトリー」と表現している。

■変更履歴
掲載当初、「MSC Software 2019 Users Conference」の日付を2017年7月10日としましたが、正しくは2019年です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2019/07/16 19:06]