ANAホールディングス(ANAHD)の片野坂真哉社長は2019年7月10日、「IT Japan 2019」(日経BP社主催)の基調講演で同社のデジタルトランスフォーメーション(DX)に対する取り組みを紹介。これまでの常識にとらわれず新たな考え方を育んでいくこと、失敗しても恐れず挑戦を続けていくことの重要性を説いた。

「IT Japan 2019」の基調講演に登壇したANAホールディングス(ANAHD)の片野坂真哉社長
(撮影:井上 裕康)
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ANAの成長の陰にDXあり

 同社は1952年にヘリコプター2機で創業。1986年には国際線に参入し、直近では2019年3月期の連結売上高が初めて2兆円を突破し、4期連続最高益を記録するなど成長を続けている。その過程で同社は、ITなどの活用によるサービスや働き方の変革、今で言うDXを繰り返してきたという。

 片野坂社長はそうした過去のDXの例として、操縦系をデジタル化したボーイング767の導入によるパイロット3人体制から2人体制への移行、マイレージシステムの導入によるマーケティングの高度化、自動チェックイン機やチケットレス搭乗サービスによる空港業務の効率化、レベニューマネジメントシステムの導入による搭乗率の向上などを挙げる。

 さらに今後も成長戦略の一環としてDXを進めていく姿勢を片野坂社長は示す。例えば「OneID」と呼ばれる空港の出発動線の顔認証システムの準備を進めているという。さらに予約・発券・チェックインなどを担う旅客系基幹システムについて「現在は内際(国内線・国際線)が分かれているが、これを1つにするのが長年の夢だ」と述べた。

 「内際のオペレーターの入力方法を統一できるし、自社でシステムを保有し補修する世界からクラウドサービスを利用する世界になっていく。今年決めようと思っている」と語り、2022年にハードウエアの保守期限切れを控える国内線の旅客系基幹システムをクラウドサービスに更新する意向を示唆した。

 一方で片野坂社長は、今後のDXはこうしたシステムの導入・刷新といったものにとどまらない幅広いものになる可能性を示す。「今年は中期経営計画の改訂版(ローリングプラン)の準備を進めているが、(数値目標の前提となる)為替や原油価格を調整するだけでは済まないとみている。銀行に行く人が減ったり若い人がお酒を飲まなくなったりするのと同様に、今後の航空事業は安泰だと言えるだろうか」と問題意識を示す。

「想像」と「創造」、さらには「妄想」も大事にするべきだと説くANAホールディングス(ANAHD)の片野坂真哉社長
(撮影:井上 裕康)
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