東芝の研究開発センターは、SiC製MOSFET向けに開発してきたゲート絶縁膜プロセス技術を改善して、実際の縦型デバイスに適用したところ、従来技術と比べてチャネル領域の抵抗を約40%低減することを確認した(ニュースリリース)。今回の技術を将来、実用化することにより、自動車や鉄道、太陽光発電、エレベーターをはじめとした様々な分野で電力変換器の電力損失を低減することが可能になり、電力消費量およびCO2排出量の削減に貢献することができるとする。

 同社によれば、現在のSiC製MOSFETでは、チャネル領域の抵抗が大きいため、使用時の電力損失低減の妨げとなっているという。そのため、チャネル領域の抵抗を下げるための新たな半導体プロセス技術が求められているとする。今回、同社はチャネル領域を形成するゲート絶縁膜プロセスとして、これまで主に使用されてきた酸化窒素(NO、N2O)ガスではなく、毒性がなく取り扱いが容易な窒素(N2)ガスを使用する新プロセス技術を開発した。

 ただし、N2ガスには反応性が乏しいという弱みがある。そこで、ゲート絶縁膜の母材となるSiO2をN2ガスで焼鈍する直前に、900℃未満の低いプロセス温度で酸素に接触させるなどの同社独自の処理を施すことにした。これによって反応性に乏しいN2ガスであっても窒化反応が十分に進み、抵抗が増大する要因となっていたチャネル領域周辺の欠陥を修復させることに成功した。

 開発した新プロセス技術を適用することで、従来技術と比較して、チャネル領域の抵抗は約40%、SiC製MOSFET全体の抵抗は約9%の低減を実現した。これにより、素子使用時の電力損失のさらなる低減が可能になるという。なお、東芝は今回の技術の詳細を中国上海で開催の国際学会「31st IEEE International Symposium on Power Semiconductor Devices and ICs(ISPSD 2019)」において発表した。

開発したプロセスの概要。東芝の図
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