日本財団は2019年4月18日、無人で運航する船舶(無人運航船)が20年後にもたらす日本経済の変化を分析した報告書「無人運航船がつくる日本の未来-Future 2040-」を発表した。同日開催したセミナーでは、日本財団常務理事の海野光行氏が登壇し、報告書の概要を説明した。

 「無人運航船は日本の経済全体を変えるポテンシャルを持っている。オールジャパン体制で取り組む体制づくりが急務だ」(海野氏)――。報告書では、2040年に国内を航行する船舶の50%が無人となるシナリオを想定。日本財団が試算した無人運航船の国内経済効果は、2040年に年間1兆円規模に達した。

 その過半数を占める内航海運や内陸水運では、自動運転トラックやドローンとの連携が活発化し、運送効率が向上する見込みである。貨物輸送の他にも、都市圏の臨海部や離島などの地域で、無人船が住民や観光客の足として広く普及すると見ている。

日本財団常務理事の海野光行氏
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 報告書では、こうした経済効果や将来像に加え、無人運航船の実現に向けた課題もまとめた。例えば、陸上からの遠隔操船を実現するネットワーク環境整備をはじめとする技術課題のほか、法整備、サイバーセキュリティーの確保といった課題である。

 今後の具体的な方策として、無人運航船について分野横断的に議論するラットフォームやスタートアップを支援するファンドの設立を掲げたほか、女性やシニア、若手人材、異分野人材が活躍できる場の提供の重要性を提言した。

 日本財団は2018年9月に今回の報告書をまとめる検討委員会を設置し、海運や海洋技術、保険、経済など多分野の識者を迎えて約半年間検討を進めてきた。委員会の座長は慶応義塾大学特別招聘教授でドワンゴ社長の夏野剛氏が務めた。

 夏野氏はセミナーに登壇し、「世界中でさまざまな産業がITの恩恵を受けている。日本はAI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)、ブロックチェーンといった一つひとつの技術は高度でも、それを社会実装するという点では海外と比べて若干遅れている。こうした状況の中、島国の日本で無人運航船を実現することは極めて重要なテーマだ」と語った。

検討委員会で座長を務めた慶応義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏
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