日本航空(JAL)は2019年4月17日、航空機のけん引車(トーイングカー)の運転訓練をVR(仮想現実)で実施するためのシステムを報道関係者に公開した。これまで3.5~4カ月かかっていたトーイングカーの運転訓練にVRによる自習環境を加えることで、初学者でもトーイングカー特有の微妙なハンドル調整などに慣れやすくして、訓練期間の短縮を図る。

VRによるけん引車の運転操作の訓練イメージ
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 空港の地上支援(グランドハンドリング)業務を手掛けるグループ会社のJALグランドサービス(JGS)が5台を導入し、4月8日から運転訓練での使用を始めた。ゲーム向けの高性能ノートPCでVRコンテンツを動かし、訓練者はPCに接続したVRゴーグルを装着したうえで、ハンドル型コントローラーやフットペダルなどを操作する。出発時に航空機を駐機場から誘導路へ押し出すプッシュバックなどの運転操作を実車と同様にシステムで自習できる。

 夜間や降雨・降雪などの視界も設定画面の切り替えにより再現できる。機器一式はキャリーカートに収納可能といい「就航便数の少ない地方空港でも実機と同様の訓練ができる」(JALグランドサービスの鈴木誠二安全品質部部長)。

羽田空港の格納庫から駐機場へ機体をけん引するという想定の訓練イメージ。VRコンテンツでは羽田空港の駐機場4カ所を再現しており、後方確認しながらのアクセルやハンドル操作など、実機と同様の運転操作ができる
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 JGS社内で2018年春からVRの導入を検討し、価格やVRの画面、運転操作のリアルさなどからコミュニケーション・プランニング(東京都港区)を開発パートナーに選んだ。「PCやVRゴーグル、ハンドルなどは市販品を使えるほか、自社開発のVR開発・実行フレームワークを使いVRコンテンツの開発工数を減らした。それにより開発費用は数百万円と他社よりも1ケタ安く、開発期間も3~4カ月ほどと短い」(コミュニケーション・プランニングの高見昌和執行役員)。

 JALは空港などの現場業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しており、複数の取り組みを実施している。空港関連では、羽田空港のラウンジで3Dホログラムを使って接客する実証実験も4月10日~22日に展開している。NTTコミュニケーションズの3Dホログラムシステム「エアリアルUI」を活用し、係員が常駐していないラウンジ内のシャワールームの受付において、案内画面やラウンジ係員が宙に浮かんでいるように表示させる。

ラウンジ内のシャワールームで実証実験中の3Dホログラムによる遠隔応対システム
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 エアリアルUIの表示装置にはモーションキャプチャーも内蔵している。空間に浮かんだ「係員呼び出し」のアイコンを乗客がタッチすることで遠隔地のラウンジ係員を呼び出す。その後は一般的なテレビ会議システムと同様に、空間上に表示されたラウンジ係員と対話。ラウンジ係員がシャワールームのスマートロックを遠隔で解錠することで、入室までの誘導がリモートで完結する。

 実証実験の意義については「従来は呼び出しボタンを押してからラウンジ係員が受付に行くまで時間を要し、乗客と係員の双方にストレスとなっていた。3Dホログラムによる遠隔受付で対応が早くなり、係員の負担も減った」(デジタルイノベーション推進部の落岩麻衣さん)としている。今後、乗客や係員へのアンケート結果などを踏まえ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでの本格導入を目指す。